貧血を伴うAMIへの赤血球輸血によるMACE発生、制限的vs.非制限的/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/22

 

 貧血を伴う急性心筋梗塞(AMI)患者への制限的赤血球輸血は、30日後の主要有害心血管イベント(MACE)の発生に関して、非制限的赤血球輸血に対し非劣性であるが、設定された非劣性マージンが大き過ぎて臨床的に重要な有害性を包含する可能性があることが、フランス・パリ大学のGregory Ducrocq氏らが行った「REALITY試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年2月9日号に掲載された。貧血は、出血の有無を問わずAMI患者で一般的にみられ、予後に影響を及ぼす。また、急性冠症候群では、中等度の貧血(ヘモグロビン値10~12g/dL)であっても、正常ヘモグロビン値と比較して心血管系の原因による死亡率が高い。ヘモグロビン値が10g/dLを下回れば輸血を要するとの考え方が一般的だが、頑健性の高いデータがないため、実臨床では輸血の実施に大きなばらつきがあるという。

35施設が参加した非盲検無作為化非劣性試験

 本研究は、貧血を伴うAMI患者への輸血におけるMACEの発生に関して、制限的赤血球輸血戦略の非制限的赤血球輸血戦略に対する非劣性の検証を目的とする非盲検無作為化試験であり、フランスの26施設とスペインの9施設が参加し、2016年3月~2019年9月の期間に患者登録が実施された(フランス保健省などの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、ヘモグロビン値が7~10g/dLのAMI患者であり、AMIによる初回入院中に試験への登録が行われた。AMIは、ST上昇の有無は問わず、入院前48時間以内に虚血症状と心筋傷害バイオマーカーの上昇が認められた場合とされた。

 被験者は、制限的赤血球輸血(ヘモグロビン値≦8g/dLとなるまで輸血を開始せず、開始後の目標値8~10g/dLで輸血)または非制限的赤血球輸血(無作為化後にヘモグロビン値≦10g/dLの全例に、目標値11g/dLで輸血)を受ける群に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、30日時点でのMACE(全死因死亡、脳卒中、再発MI、虚血による緊急血行再建の複合)の発生とした。非劣性は、主要アウトカムの片側97.5%信頼区間(CI)の上限値が1.25以内の場合とした。副次アウトカムは、主要アウトカムの個々の構成要素であった。

30日MACE発生率:11.0% vs.14.0%

 666例(年齢中央値77歳[IQR:69~84]、女性281例[42.2%]、糖尿病334例[50.2%])が登録され、制限的輸血群に342例、非制限的輸血群には324例が割り付けられた。制限的輸血群は122例(35.7%、合計342単位)、非制限的輸血群は323例(99.7%、合計758単位)が、少なくとも1単位の赤血球の輸血を受けた。

 実際に輸血を受けた集団における30日時点でのMACE発生率は、制限的輸血群が11.0%(36/327例)、非制限的輸血群は14.0%(45/322例)であった(群間差:-3.0%、95%信頼区間[CI]:-8.4~2.4)。主要アウトカムの相対リスクは0.79(片側97.5%CI:0.00~1.19)であり、非劣性の判定基準を満たした。

 全死因死亡は制限的輸血群5.6%、非制限的輸血群7.7%、再発MIはそれぞれ2.1%および3.1%、虚血による緊急血行再建は1.5%および1.9%、非致死的虚血性脳卒中はいずれも0.6%で発生した。

 無作為化集団で少なくとも1件の有害事象を認めた患者の割合は、制限的輸血群11.7%(40/342例)、非制限的輸血群11.1%(36/324例)であった。急性腎障害が制限的輸血群9.7%、非制限的輸血群7.1%、急性心不全がそれぞれ3.2%および3.7%、急性肺障害/ARDSが0.3%および2.2%で発生した。

 著者は、「1.25という非劣性マージンは、潜在的に、臨床的に重要な有害性を包含しており、大き過ぎる可能性がある」と指摘し、「AMI患者を対象とし、同様のデザインで、より大規模な試験(MINT試験)が進行中であり、この試験は臨床的優越性の検出力を持つ」としている。

(医学ライター 菅野 守)