院外心停止・難治性心室細動、早期ECMO蘇生vs.標準的ACLS/Lancet

院外心停止(OHCA)および難治性心室細動を呈した患者において、早期の体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた蘇生法は、標準的な二次心肺蘇生法(ACLS)と比べて、生存退院率を有意に改善することが、米国・ミネソタ大学のDemetris Yannopoulos氏らによる第II相の単施設非盲検無作為化試験「ARREST試験」の結果、示された。OHCAや心室細動を呈した患者では、半数以上が初期の標準的なACLSに反応せず難治性心室細動を呈する。研究グループは、より高度な再灌流戦略の適応性、安全性および有効性を確認するため、OHCAと難治性心室細動患者を対象にECMO蘇生法と標準的ACLSを比較する、米国で初となる無作為化試験を行った。Lancet誌オンライン版2020年11月13日号掲載の報告。
生存退院を主要アウトカムに、単施設無作為化試験
研究グループは、ミネソタ大学医療センターに搬送された18~75歳でOHCAおよび難治性心室細動を呈し、3回の電気ショック後も心拍再開なし、機械的CPR装置(Lund University Cardiac Arrest System:LUCAS)を使用、搬送時間が30分未満の患者を対象に試験を行った。患者は病院到着時に、ランダムに変化するブロックサイズを有する置換ブロック法で作成された安全なスケジュールを使用して、早期ECMO蘇生法群と標準的ACLS群に無作為に割り付けられた。割り付けの秘匿を達成するため、情報を知るためには表面を削り取る必要があるスクラッチカードが用いられた。
主要アウトカムは、生存退院とし、副次アウトカムは、退院時および退院後3ヵ月・6ヵ月時点の安全性、生存率、機能評価であった。すべての解析は、ITTベースで行われた。本試験では、インフォームド・コンセントによる除外が認められていた。
生存退院率、早期ECMO蘇生法群43%、標準的ACLS群7%
2019年8月8日~2020年6月14日に、適格患者36例が搬送され、6例を除外後、30例が標準的ACLS群(15例)または早期ECMO蘇生法群(15例)に無作為化された。早期ECMO蘇生法群の1例が退院前に試験から離脱した。被験者の平均年齢は59歳(範囲:36~73)、25/30例(83%)が男性であった。
生存退院は、標準的ACLS群1/15例(7%、95%確信区間[Crl]:1.6~30.2)、ECMO蘇生法群6/14例(43%、21.3~67.7)であった(群間リスク差:36.2%[95%Crl:3.7~59.2]、ECMO優越性の事後確率:0.9861)。
ECMO優越性の事後確率が事前規定のモニタリング限界値を上回っていたため、被験者30例の登録後にData Safety Monitoring Boardから全会一致の推奨を受けて、米国国立心肺血液研究所(NHLBI)による初回の事前計画中間解析を行った時点で試験は終了となった。
累積6ヵ月生存率は、標準的ACLS群よりも早期ECMO蘇生法群が有意に優れていた(ハザード比:0.16、95%信頼区間:0.06~0.41、log-rank検定のp<0.0001)。予期せぬ重篤有害事象は観察されなかった。
(ケアネット)
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コメンテーター : 今井 靖( いまい やすし ) 氏
自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授 附属病院 薬剤部長
J-CLEAR評議員