欠損データはシステマティックレビューへの影響大/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/09

 

 システマティックレビューに包含する無作為化試験に、欠損データ(missing data)が含まれていると、結果に偏りが出る可能性があるといわれるが、レバノン・ベイルート・アメリカン大学医療センターのLara A. Kahale氏らによる検討で、欠損データはシステマティックレビューの結果に潜在的な影響を与えることが明らかにされた。システマティックレビューでバイアスリスクを評価する場合と、臨床試験結果へ欠損データを反映する場合にその影響が認められるという。結果を踏まえて著者は、「システマティックレビューの著者は、効果推定値への欠損アウトカムデータの潜在的影響を示しておかなくてはならない。また、その影響について、バイアスリスクのGRADE(grading of recommendations assessment, development, and evaluation)を用いて検証し、結果の解釈を示す必要がある」とまとめている。BMJ誌2020年8月26日号掲載の報告。

8つの仮定を適用し、それぞれの効果推定値への影響を検証

 研究グループは欠損値補完研究(Imputation study)にて、システマティックレビューにおける欠損アウトカムデータとバイアスリスクの関連を調べた。患者にとって重要な二項対立の有効性アウトカムをグループレベルでメタ解析し、統計学的に有意な効果があることを報告していた100件のシステマティックレビューを対象に検証した。

 主要評価項目は、(1)4つの一般的に議論されたが妥当ではない仮定(最良のケースシナリオ、イベントなし、すべてイベントあり、最悪のケースシナリオ)、(2)IMOR(informative missingness odds ratio)法(IMOR 1.5[最もずさん]、IMOR 2、IMOR 3、IMOR 5[最も厳密])に基づく欠損データの4つのもっともらしい仮定を、それぞれ適用した場合の相対的効果推定値における変化の割合の中央値であった。また、各手法によって、無効果(null effect)の閾値が変わったメタ解析の割合、効果の方向性が質的に変わったメタ解析の割合も評価した。欠損データを処理する8つの方法に基づく感度解析も行った。

もっともらしい仮定の適用でもメタ解析の22%で無効果の閾値が変動

 100件のシステマティックレビューには653件の無作為化試験が含まれていた。

 (1)を適用した場合、相対的効果推定値の変化の中央値は0%~30.4%にわたった。無効果の閾値が変わったメタ解析の割合は、1%(最良のケースシナリオ)~60%(最悪のケースシナリオ)にわたり、26%が最悪のケースシナリオで効果の方向性が変わった。

 (2)を適用した場合、相対的効果推定値の変化の中央値は1.4%~7.0%にわたった。無効果の閾値が変わったメタ解析の割合は、6%(IMOR 1.5)~22%(IMOR 5)にわたり、2%が最も厳密な仮定(IMOR 5)で効果の方向性が変わった。

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員