ClinicalTrials.govへの結果報告、順守率は4割/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/31

 

 ClinicalTrials.govへの試験結果の報告に関するコンプライアンスを評価したコホート研究の結果、2007年FDA改正法(Food and Drug Administration Amendments Act of 2007:FDAAA)の順守率は低いままで改善はされていないことが、英国・オックスフォード大学のNicholas J. DeVito氏らにより報告された。臨床試験の結果報告の不履行は、臨床診療のエビデンスの基礎を歪曲する可能性があり、被験者に対する研究者の倫理的義務違反や、重要な研究資源を無駄にすることを意味する。FDAAA 2007では、臨床試験のスポンサーが試験完了1年以内にClinicalTrials.govへ直接結果を報告するよう求めており、今回の改正のFinal Ruleの対象となる最初の試験は、2018年1月に結果報告書を公開することとなっていた。Lancet誌オンライン版2020年1月17日号掲載の報告。

FDAAA 2007に基づく結果報告について分析

 研究グループは2018年3月~2019年9月の間、毎月、ClinicalTrials.govに登録された全臨床試験のデータをダウンロードした。2019年9月16日にClinicalTrials.govから抽出したデータに関して横断分析を実施し、2018年3月~2019年9月の期間で毎月15日に最も近いアーカイブデータを使用して毎月の傾向分析を行った。
 本研究では、FDAAAに基づき結果を報告すべきすべての臨床試験を組み入れ、該当しない臨床試験、報告期限前の臨床試験および報告延期の許可証明が与えられた臨床試験は解析から除外した。試験結果が提出され、ClinicalTrials.govで公開または品質管理審査中の場合は、報告されたものと見なした。法律に準じて主要な試験の完了日から1年以内に結果が提出された場合は、FDAAA 2007 Final Ruleを順守しているものとした。

期限である試験完了後1年以内に結果報告がなされた臨床試験は40.9%

 結果を報告すべき臨床試験は4,209件で、このうち1,722件(40.9%、95%信頼区間[CI]:39.4~42.2)は1年の期限内に結果を報告しており、2,686件(63.8%、62.4~65.3)は随時結果を提出していた。

 順守率は2018年7月から改善していなかった。企業がスポンサーの場合は非企業や米国政府がスポンサーの場合に比べ(オッズ比[OR]:3.08、95%CI:2.52~3.77)、同様に多くの臨床試験を実施しているスポンサーは小規模のスポンサーに比べ(11.84、9.36~14.99)、順守する傾向が有意に高かった。提出期限の主要な試験の完了日から提出日までの期間は、中央値424日(95%CI:412~435)であり、法的報告要件である1年よりも59日遅れていた。

 本研究はFDAAA 2007 Final Ruleの順守率を詳細に評価した最初の研究であり、著者は、「順守率の低さは、規制当局による強制力の欠如を反映しているものと考えられる。スポンサーの実効と行動が必要であり、各スポンサーがコンプライアンスに関する監査を公開することが有用であろう」としたうえで、「各スポンサーおよび臨床試験に関するコンプライアンスデータを、ウェブサイトfdaaa.trialstracker.net.で更新し続けていく予定である」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員