身体活動が活発な中高年者ほど、寿命は長い/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/07/09

 

 心血管疾患やがんの患者を含む中高年者では、過去の身体活動の程度や確定したリスク因子(食事、体重、血圧、コレステロール値など)の変化にかかわらず、身体活動が活発なほど死亡リスクが低く、実質的に寿命が長くなることが、英国・ケンブリッジ大学のAlexander Mok氏らによる、EPIC-Norfolk試験のデータを用いた研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年6月26日号に掲載された。ある時点で評価した身体活動は、全原因死亡や、心血管疾患およびがんによる死亡のリスク低下と関連することが報告されているが、身体活動の長期的な変化を検討し、さまざまな身体活動の変化の過程が健康に及ぼす影響を定量化した研究は少ないという。

40~79歳の1万4,599例を12.5年追跡したコホート研究
 研究グループは、全原因、心血管疾患およびがんによる死亡に及ぼす、ベースラインの身体活動とその長期的な変化の過程の関連を前向きに評価する目的で、住民ベースのコホート研究を行った(英国医学研究協議会[MRC]などの助成による)。

 European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition-Norfolk(EPIC-Norfolk)コホートに登録された40~79歳の1万4,599例について、ベースライン(1993~97年)から2004年までに、3回のフォローアップ(1995~99年、1998~2000年、2002~04年)を行い、生活様式および他のリスク因子の評価を行った。次いで、これらの参加者の2016年までの死亡状況を調査した(身体活動の最終評価からのフォローアップ期間中央値12.5年)。

 妥当性が検証された質問票を用いて、身体活動によるエネルギー消費量(physical activity energy expenditure:PAEE)を評価した。就業時の身体活動(座位、立位、重い肉体労働などで3つに分類)と余暇時の身体活動(週に0時間、0.1~3.5時間、3.6~7時間、>7時間)から、PAEE(kJ/kg/日)を算出した。

 主要評価項目は、全原因、心血管疾患、がんによる死亡とし、多変量比例ハザード回帰モデル(年齢、性別、社会人口学的因子、病歴、全般的な食事の質、BMI、血圧、トリグリセライド値、コレステロール値で補正)を用いて解析した。

最小限の身体活動の達成で、不活動関連死の46%が予防可能
 1万4,599例の参加者のベースラインの平均年齢は58.0歳(SD 8.8)、女性が56.6%で、17万1,277人年のフォローアップ期間中に3,148例(心血管疾患死950例、がん死1,091例)が死亡した。

 長期的なPAEEの増加は、ベースラインのPAEEとは独立的に、死亡と逆相関の関連が認められた。すなわち、PAEEの年間1kJ/kg/日の増加(ベースライン時に身体不活動で、その後5年をかけて徐々にWHOの身体活動ガイドラインの中強度身体活動[150分/週]に達した場合に相当)ごとのハザード比(HR)は、ベースラインのPAEEと確定したリスク因子で調整すると、全原因死亡が0.76(95%信頼区間[CI]:0.71~0.82)、心血管疾患死が0.71(0.62~0.82)、がん死は0.89(0.79~0.99)と、いずれも有意差がみられ、長期的な身体活動の増加による死亡率の低下が示された。心血管疾患およびがんの病歴で層別化した場合にも、同様の結果が認められた。

 ベースラインの身体活動と、身体活動の変化の過程の統合解析では、一貫して身体不活動の集団と比較して、身体活動が経時的に増加した集団は、全原因死亡のリスクが、ベースラインの身体活動が低い集団で24%(HR:0.76、95%CI:0.65~0.88)、中等度の集団で38%(0.62、0.53~0.72)、高い集団では42%(0.58、0.43~0.78)、それぞれ有意に低下した。

 住民集団レベルでは、少なくとも最小限の身体活動の推奨(中強度:150分/週)を達成し、これを維持することで、身体不活動に関連する死亡の46%が予防可能と推定された。

 著者は、「公衆衛生戦略は、最小限の推奨の達成に向けた転換を目指すべきであり、中年~晩年における身体活動低下の予防に重点的に取り組む必要がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

原著論文はこちら