ペムブロリズマブ、進行胃がんの2次治療の初回解析/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/20

 

 化学療法施行後に病勢が進行した胃・食道胃接合部がん患者のアウトカムは不良である。国立がん研究センター東病院の設樂 紘平氏らは、PD-L1陽性の進行胃・食道胃接合部がんの2次治療において、抗PD-1抗体製剤ペムブロリズマブは標準治療のパクリタキセルと比較して、全生存(OS)を改善しないことを示した(KEYNOTE-061試験)。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年6月4日号に掲載された。米国食品医薬品局(FDA)は、PD-L1の発現がみられ、プラチナ製剤またはフッ化ピリミジン系薬を含む化学療法、あるいはHER2/neu標的療法による2ライン以上の治療で病勢が進行した局所再発進行または転移を有する胃・食道胃接合部がんの患者の治療において、ペムブロリズマブの迅速承認を認可している。

日本を含む30ヵ国148施設に592例を登録
 KEYNOTE-061試験は、プラチナ製剤およびフッ化ピリミジン系薬による1次治療で病勢が進行した進行胃・食道胃接合部がん患者における、ペムブロリズマブの有用性をパクリタキセルと比較する非盲検無作為化第III相試験(Merck Sharp & Dohmeの助成による)。
 被験者は、ペムブロリズマブ200mgを3週ごとに最長35サイクル(約2年間)静脈内投与する群、またはパクリタキセル80mg/m2を、4週を1サイクルとしてDay 1、8、15に投与する群に無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、PD-L1 combined positive score(CPS)≧1の患者における全生存(OS)および無増悪生存(PFS)であった。CPSは、PD-L1陽性細胞数(腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ)を総腫瘍細胞数で除して100を乗じた数値と定義した。安全性は、CPSにかかわらず全例で評価した。OSは、p=0.0135(片側)を有意差の閾値とした。

 2015年6月4日~2016年7月26日の期間に、日本を含む30ヵ国148施設に592例が登録され、ペムブロリズマブ群に296例(年齢中央値:62.5歳、男性:68%)、パクリタキセル群にも296例(60.0歳、70%)が割り付けられた。このうち395例がPD-L1 CPS≧1であり、ペムブロリズマブ群が196例、パクリタキセル群は199例だった。

OS中央値:9.1 vs.8.3ヵ月、安全性プロファイルは良好
 2017年10月26日時点で、追跡期間中央値は全症例が7.9ヵ月、PD-L1 CPS≧1の集団は8.5ヵ月であった。PD-L1 CPS≧1の集団のうち326例が死亡し、死亡率はペムブロリズマブ群が77%(151/196例)、パクリタキセル群は88%(175/199例)であった。

 PD-L1 CPS≧1の集団におけるOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が9.1ヵ月、パクリタキセル群は8.3ヵ月であり、両群に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.66~1.03、片側検定:p=0.0421)。また、PFS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が1.5ヵ月、パクリタキセル群は4.1ヵ月であった(HR:1.27、95%CI:1.03~1.57)。

 奏効率はペムブロリズマブ群が16%(31/196例)、パクリタキセル群は14%(27/199例)であった。奏効期間中央値はそれぞれ18.0ヵ月、5.2ヵ月であり、ペムブロリズマブ群のほうが持続的であった。

 全症例における治療関連有害事象の発生率は、ペムブロリズマブ群が53%(155/294例)、パクリタキセル群は84%(232/276例)であった。Grade3~5の治療関連有害事象は、それぞれ14%(42例)、35%(96例)に認められ、治療中止は3%(9例)、5%(15例)だった。

 有害事象プロファイルは、両群とも予想どおりであった。最も頻度の高いGrade3~5の有害事象は、ペムブロリズマブ群で貧血(2%)、疲労(2%)、パクリタキセル群では好中球数の減少(10%)、好中球減少(7%)であった。Grade3~5のとくに注目すべき有害事象として、ペムブロリズマブ群では肝炎が4例、下垂体炎が2例、肺臓炎が2例にみられた。

 著者は、「長期の追跡に伴ってペムブロリズマブのベネフィットが明らかとなり、12ヵ月時および18ヵ月時の推定OS率は、それぞれ40%(パクリタキセル群:27%)、26%(同:15%)と、臨床的に意義のあるものであった。また、全身状態(ECOG PS)が良好、PD-L1発現レベルが高度、腫瘍組織のマイクロサテライト不安定性が高度の患者では、ペムブロリズマブの効果が高い可能性が示唆された」とし、「良好な安全性プロファイルとともに、これらのデータは、ペムブロリズマブ単剤療法のベネフィットを得る可能性の高い患者を同定するための探索の継続と、現在進行中の併用レジメンの開発を支持するものである」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)