糖尿病性網膜症に新たなスクリーニング法/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/12/27

 

 シンガポール・国立眼科センターのDaniel Shu Wei Ting氏らは、ディープラーニングシステム(DLS)を活用した、糖尿病性網膜症および関連する眼疾患を検出するスクリーニング法を開発し検証試験を行った。検証試験は、多民族から成る糖尿病患者集団の網膜像評価で行われ、DLSは糖尿病性網膜症および関連する眼疾患の検出について、高い感度および特異度を示したという。著者は、「さらなる研究を行い、健常者でのスクリーニングにDLSが応用可能かについて、また視機能の改善に果たすDLSの有用性を検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2017年12月12日号掲載の報告。

シンガポールの多民族患者コホートで学習訓練と検証試験
 研究グループは、糖尿病を有する、地域およびクリニックベースの多民族集団で、糖尿病性網膜症、失明の恐れのある糖尿病性網膜症、疑い例を含む緑内障、加齢黄斑変性(AMD)の検出におけるDLSのパフォーマンスを評価した。診断能の評価は、網膜像49万4,661例を用いて行った。

 まずDLSは、糖尿病性網膜症(7万6,370画像を使用)、疑い例を含む緑内障(12万5,189画像)、AMD(7万2,610画像)の検出について訓練を受け、その後、糖尿病性網膜症(11万2,648画像)、疑い例を含む緑内障(7万1,896画像)、AMD(3万5,948画像)について診断能の評価を受けた。

 DLSの訓練は2016年5月に完了。検証試験は、糖尿病性網膜症(中等症の非増殖糖尿病性網膜症または増悪例)、失明の恐れのある糖尿病性網膜症(重症の非増殖糖尿病性網膜症または増悪例)の検出について、2017年5月に完了した。検証試験の主要データセットは、Singapore National Diabetic Retinopathy Screening Programと10の多民族糖尿病患者コホートであった。

 主要評価項目は、DLSの標準参照としての専門評価者(網膜専門医、一般眼科医、訓練を受けた評価者、オプトメトリスト)に対するROC曲線下面積(AUC)、感度、特異度とした。

糖尿病性網膜症、緑内障、AMDの検出、感度、特異度ともに高値を示す
 主要検証データセットは、患者1万4,880例、7万1,896画像、平均年齢60.2(SD 2.2)歳、男性54.6%であった。同データセットにおける各有病率は、糖尿病性網膜症3.0%、失明の恐れのある糖尿病性網膜症0.6%、疑い例を含む緑内障0.1%、AMD 2.5%であった。

 DLSの糖尿病性網膜症についてのAUCは0.936(95%信頼区間[CI]:0.925~0.943)、感度90.5%(95%CI:87.3~93.0)、特異度91.6%(同:91.0~92.2)であった。失明の恐れのある糖尿病性網膜症については、AUC 0.985(0.956~0.961)、感度100%(94.1~100.0)、特異度91.1%(90.7~91.4)であった。疑い例を含む緑内障については、AUC 0.942(0.929~0.954)、感度96.4%(81.7~99.9)、特異度87.2%(86.8~87.5)であった。AMDについては、AUC 0.931(0.928~0.935)、感度93.2%(91.1~99.8)、特異度88.7%(88.3~89.0)であった。

 10の追加データセット(4万752画像)における糖尿病性網膜症のAUCは、0.889~0.983であった。

(ケアネット)

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コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長

J-CLEAR評議員