イダルシズマブはダビガトラン中和薬として有用/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/07/31

 

 イダルシズマブ(商品名:プリズバインド)の、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の中和薬としての有効性、安全性について検討した臨床試験「RE-VERSE AD」のフルコホート解析の結果が発表された。緊急時においてイダルシズマブは、迅速、完全かつ安全にダビガトランの抗凝固作用を中和することが示されたという。イダルシズマブの有用性は、同試験の登録開始90例の時点で行われた中間解析で示されていたが、今回、米国・トーマス・ジェファーソン大学のCharles V. Pollack氏らが全503例の解析を完了し、NEJM誌オンライン版2017年7月11日号で発表した。

39ヵ国173施設で登録された503例について評価
 試験は多施設共同前向き非盲検にて行われ、イダルシズマブ5g静注がダビガトランの抗凝固作用を中和可能かについて、重大出血を呈した患者(A群)または緊急手術を要した患者(B群)を対象に検討された。

 主要エンドポイントは、イダルシズマブ投与後4時間以内のダビガトラン抗凝固作用の最大中和率(%)で、希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間について確認された。副次エンドポイントは、止血までの時間や安全性評価などが含まれた。

 2014年6月~2016年7月に、39ヵ国173施設で503例が登録された。A群は301例、B群は202例であった。95%以上の患者が、心房細動に関連する脳卒中予防の目的でダビガトランを服用しており、年齢中央値は78歳であった。患者報告に基づく、最終ダビガトラン投与から初回イダルシズマブ投与までの時間は、A群14.6時間、B群18.0時間であった。なお被験者の多くが試験登録時に合併症を有していた。A群では、消化官出血が45.5%、頭蓋内出血32.6%、外傷性出血25.9%などが、B群では重大または命を脅かす出血が88.0%、外科的介入に至った出血が20.3%、出血で血行動態が不安定となった患者が37.9%いた。

最大中和率は100%(95%CI:100~100)
 解析の結果、ダビガトランの最大中和率は、希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間ともに100%(95%信頼区間[CI]:100~100)であった。

 A群における止血までの時間中央値は、2.5時間であった。B群では、計画的処置介入の開始までの時間中央値は1.6時間であった。また、B群において、93.4%の患者が周術期止血は正常と評価され、軽度異常は5.1%、中等度異常は1.5%であった。

 90日時点で、血栓性イベントが報告されたのはA群6.3%、B群7.4%であった。また死亡率はそれぞれ18.8%、18.9%であった。安全性に関わる重篤有害なシグナルはなかった。
 結果を踏まえて著者は、「イダルシズマブは、重大出血を呈した患者や緊急手術を要した患者でダビガトランの中和に有効であった。血栓溶解または血栓摘出は、イダルシズマブによるダビガトラン中和後に安全に実行可能であることを示すケースが報告されているが、さらなる市販後調査によって、引き続きイダルシズマブの有効性をモニタリングし、安全性を評価することが求められる」とまとめている。

(ケアネット)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事