バイスタンダーによる蘇生処置が予後を大幅に改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/05/18

 

 バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)および除細動の実施は、脳障害/介護施設入所や全死因死亡の1年リスクを、いずれも3~4割と有意に低減することが示された。デンマーク・オールボー大学のKristian Kragholm氏らが2,855例を対象に行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年5月4日号で発表した。院外心停止へのバイスタンダーによる介入と長期機能アウトカムとの関連について、これまで大規模に検討されたことはなかった。

デンマークの院外心停止全国データを基に試験
 研究グループは、デンマークの院外心停止に関する全国データ「Danish Cardiac Arrest Registry」を基に、院外心停止後30日以上生存した人の低酸素性脳障害または介護施設入所、および全死因死亡の1年リスクと、バイスタンダーによるCPRまたは除細動の有無との関連を分析した。

 また、バイスタンダーCPR/除細動の実施率とアウトカムの経時的変化も評価した。

バイスタンダーCPR、脳障害・介護施設入所リスクを4割低減
 分析の結果、2001~12年に院外心停止し30日以上生存した2,855例のうち、1年間の追跡期間中に脳障害/介護施設に入所した人の割合は10.5%、死亡は9.7%だった。

 また、30日生存者のうち、心停止時に救急医療隊員(EMS)の立ち会いがなかったのは2,084例であった。バイスタンダーCPRの実施率は2001年の66.7%から2012年の80.6%に、バイスタンダー除細動実施率は2.1%から16.8%に、いずれも有意に増加していた(いずれもp<0.001)。一方で、同期間の全死因死亡率は18.0%から7.9%に減少した(p=0.002)。

 補正後解析の結果、バイスタンダーによるCPRの実施は、非実施と比較して、脳障害/介護施設入所リスクを約4割低減し(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.47~0.82)、また、全死因死亡リスクを約3割低減(HR:0.70、95%CI:0.50~0.99)したことが認められた。両者を複合したエンドポイントのハザード比は0.67(95%CI:0.53~0.84)であった。

 一方、バイスタンダー除細動を実施した場合では、非実施と比較して、脳障害/介護施設入所リスク、総死亡リスクはさらに低率だった(それぞれハザード比:0.45、0.22)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)