安定冠動脈疾患にRAS阻害薬は他剤より有効か/BMJ

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 心不全のない安定冠動脈疾患の患者に対するレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の投与は、プラセボとの比較では心血管イベント・死亡のリスクを低減するものの、Ca拮抗薬やサイアザイド系利尿薬などの実薬との比較では、同低減効果は認められなかった。また、対プラセボでも対照集団が低リスクの場合は、同低減効果は認められなかった。米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らが、24の無作為化試験についてメタ解析を行い明らかにし、BMJ誌2017年1月19日号で発表した。心不全のない安定冠動脈疾患患者へのRAS阻害薬投与については、臨床ガイドラインでは強く推奨されているものの、最近の現行治療への上乗せを検討した試験結果では、対プラセボの有効性が示されなかった。

非心不全・冠動脈疾患患者100例以上、追跡期間1年以上の試験を対象にメタ解析
 研究グループは、PubMed、EMBASE、コクラン・ライブラリCENTRALを基に、2016年5月1日までに発表された、心不全のない(左室駆出分画率40以上または臨床的心不全なし)安定冠動脈疾患を対象に、RAS阻害薬とプラセボまたは実薬を比較した24の無作為化試験についてメタ解析を行い、RAS阻害薬の有効性を検証した。

 対象とした試験は100例以上の該当患者を含み、また追跡期間は1年以上だった。アウトカムは死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、糖尿病発症、有害事象による服薬中止だった。

RAS阻害薬は死亡率14.10/1,000人年超の集団で有効
 分析対象とした試験の総追跡期間は、19万8,275人年だった。

 RAS阻害薬群はプラセボ群に比べ、全死因死亡(率比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.72~0.98)、心血管死(0.74、0.59~0.94)、心筋梗塞(0.82、0.76~0.88)、脳卒中(0.79、0.70~0.89)、また、狭心症(0.94、0.89~0.99)、心不全(0.78、0.71~0.86)、血行再建術(0.93、0.89~0.98)のリスクをいずれも低減した。一方で実薬との比較では、いずれのアウトカム発生リスクの低減は認められなかった。率比は全死因死亡1.05(95%CI:0.94~1.17、交互作用のp=0.006)、心血管死1.08(0.93~1.25、p<0.001)、心筋梗塞0.99(0.87~1.12、p=0.01)、脳卒中1.10(0.93~1.31、p=0.002)などだった。

 ベイズ・メタ回帰分析の結果、RAS阻害薬による死亡・心血管死リスクの低減が認められたのは、対照群のイベント発生率が高値の集団(全死因死亡14.10/1,000人年超、心血管死7.65/1,000人年超)だった試験のみで、低値の集団だった試験では同低減効果は認められなかった。

 著者は、「心不全のない安定冠動脈疾患患者において、RAS阻害薬の心血管イベントおよび死亡の抑制は、プラセボ対照群の試験でのみみられ、実薬対照群の試験ではみられなかった。またプラセボ対照群においても、RAS阻害薬の有益性は、主に対照群のイベント発生率が高かった試験では認められたものの、低い場合は認められなかった」と述べている。そのうえで、「その他の実薬対照を含めてRAS阻害薬が優れていることを支持するエビデンスはない」とまとめている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 石上 友章( いしがみ ともあき ) 氏

横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学教室 准教授

J-CLEAR評議員

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