急性呼吸促迫症候群、アスピリン早期投与で予防できるか/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/05/30

 

 急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症に、アスピリンの早期投与は効果があるのか、米国・メイヨークリニック大学のDaryl J. Kor氏らが、第II相の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行い検討した。救急部門(ED)に出現した高リスク患者390例を対象に検証した結果、7日時点のARDS発症に有意差は認められなかったという。ARDS治療は支持療法が主である。一方で、早期介入の発症予防効果は明らかになっていなかった。研究グループは、アスピリンを用いた早期介入の有効性と安全性を検証したが、試験の結果を踏まえて、「より大規模な第III相試験の実施を支持するデータが得られなかった」と結論している。JAMA誌オンライン版2016年5月15日号掲載の報告より。

24時間以内にアスピリン投与開始、7日間の発症を主要評価
 試験は、米国16の大学病院で行われた。2012年1月2日~2014年11月17日に救急部門(ED)に出現したARDSリスク(肺傷害予測スコア[LIPS]≧4)を有する7,673例についてスクリーニングを行い、そのうち400例を、ED出現後24時間以内にアスピリンを投与する群(初日投与325mg、その後7日、退院または死亡まで81mg/日)とプラセボ群に無作為に割り付けた。最終修正解析(intention-to-treat)は、10例を除く390例を対象に評価が行われた。

 主要アウトカムは、試験開始7日までのARDSの発症。副次アウトカムは、人工呼吸器離脱期間(日)、入院およびICU入室期間、28日生存率、1年生存率、ARDSに関連した血清バイオマーカー値の変化などであった。主要アウトカムの統計的有意性について、最終α値が0.0737(すべてのα=0.10)を要するとした。

主要・副次評価とも有意差認められず、これ以上の臨床試験無用と結論
 最終修正解析対象の390例(各群195例)は、年齢中央値57歳、女性187例(48%)であった。ED出現から入院までの時間中央値は7.3時間(IQR:5.1~10.2)、ベースラインのLIPSスコアはアスピリン群6.0(IQR:5.0~7.5)、プラセボ群5.5(同:4.5~7.0)で両群間に有意差はなかった。

 入院期間中央値は6日(IQR:3~10)であった。

 解析の結果、7日時点のARDS発症について、アスピリン(10.3%)はプラセボ(8.7%)と比較し有意に抑制はしなかった(オッズ比[OR]:1.24:92.6%信頼区間[CI]:0.67~2.31、p=0.53)。

 副次アウトカムについても、両群間の有意差はみられなかった。28日時点評価の人工呼吸器離脱期間平均値(SD)は24.9日(7.4) vs.25.2日(7.0)(平均差:-0.26、90%CI:-1.46~0.94、p=0.72)、ICU入室期間平均値(SD)は5.2日(7.0) vs.5.4日(7.0)(同:-0.16、-1.75~1.43、p=0.87)、入院期間平均値(SD)は8.8日(10.3) vs.9.0日(9.9)(同:-0.27、-1.96~1.42、p=0.79)であった。

 また、28日生存率は90% vs.90%(ハザード比:1.03、90%CI:0.60~1.79、p=0.92)、1年生存率は73% vs.75%(同:1.06、0.75~1.50、p=0.79)であった。

 出血関連有害事象の発現頻度は両群で、同程度であった(5.6% vs.2.6%、OR:2.27、90%CI:0.92~5.61、p=0.13)。