DPP-4阻害薬は心不全入院リスクを高める可能性/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/26

 

 2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬使用をめぐる心不全リスクの増大について、中国・四川大学のLing Li氏らが、無作為化比較試験(RCT)および観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、心不全リスクを増加させるかどうかは、研究の追跡期間が相対的に短くエビデンスの質も低いため不確かであるが、心血管疾患またはそのリスクを有する患者においては非使用との比較で心不全による入院のリスクが増大する可能性があることを明らかにした。BMJ誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告より。

無作為化比較試験43件、観察研究12件についてメタ解析
 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.govを用いて2015年6月25日までの論文を検索し、成人2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬と、プラセボ/生活習慣改善/血糖降下薬を比較したRCT、非RCT、コホート研究ならびに症例対照研究で、心不全または心不全による入院のアウトカムを明確に報告した研究を選択した。

 解析対象研究のスクリーニング、バイアスのリスク評価およびデータ収集は、研究者2人1組からなるチームがそれぞれ独立して行った。臨床試験と観察研究のデータはそれぞれメタ解析を行い、エビデンスの質はGRADEシステムを用いて評価するとともに、研究の異質性をコクランχ2検定とI2統計量を用いて検証した。

 RCTは43件(6万8,775例)および観察研究12件(コホート研究9件、症例対照研究3件;177万7,358例)が本研究に組み込まれた。

入院リスクは増大の可能性も
 心不全について報告しているRCT38件を解析した結果、DPP-4阻害薬群と対照群との間で心不全のリスクに有意差は認められなかった(イベント数42/1万5,701 vs.33/1万2,591、オッズ比0.97、95%信頼区間[CI]:0.61~1.56)。リスク差、すなわち5年間における2型糖尿病患者1,000例当たりの心不全イベント数の差は、-2(95%CI:-19~+28)であった。ただし、バイアスリスク等のためエビデンスの質は低かった。観察研究でも臨床試験とほぼ同様の結果であったが、エビデンスの質は非常に低かった。

 一方、心不全による入院に関しては、RCT5件の解析において、DPP-4阻害薬群で対照群よりリスクが増加することが示され、エビデンスの質は中等度であった(イベント数622/1万8,554 vs.552/1万8,474、オッズ比:1.13、95%CI:1.00~1.26)、リスク差は、8(95%CI:0~16)。観察研究では、DPP-4阻害薬群(シタグリプチン)と非使用群を比較した2件の統合解析の結果、DPP-4阻害薬群で心不全による入院のリスク増加が示唆されたが(統合調整オッズ比:1.41、95%CI:0.95~2.09)、エビデンスの質は非常に低かった。

 著者は、「報告されたデータには限界があり、心不全による入院のリスク増加が1つのクラス効果なのかは不明である」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 小川 大輔( おがわ だいすけ ) 氏

おかやま内科 糖尿病・健康長寿クリニック 院長

J-CLEAR会員

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