認知症発症率は過去30年間で低下:フラミンガム心臓研究/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/24

 

 フラミンガム心臓研究の参加者では、30年間に認知症の発症率が経時的に低下していることが、米国・ボストン大学医学部のClaudia L Satizabal氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年2月11日号に掲載された。認知症の有病率と関連医療費は、平均寿命の延長に伴い急速に増加すると予測されているが、高所得国では年齢別の認知症発症率(=特定の年齢層における認知症リスク)が減少しているという。時間的傾向(temporal trend)は、典型的な地域のサンプル集団において、新規の症例を一貫性のある診断基準を用いて継続的にモニタリングすることで信頼性が最も高くなるが、この条件を満たす既報のデータは限られている。

60歳以上の約5,200例で、4期の5年発症率を評価
 研究グループは、フラミンガム心臓研究の参加者のデータを用いて1975年以降の30年間における認知症の発症率の時間的傾向について検討を行った(米国国立保健研究所[NIH]の助成による)。

 60歳以上の5,205例を対象に、年齢と性別で補正したCox比例ハザードモデルを用いて、4つの時期(第1期:1977~1983年、第2期:1986~1991年、第3期:1992~1998年、第4期:2004~2008年)における認知症の5年発症率を算出した。

 また、各時期と年齢、性別、アポリポ蛋白(APO)Eε4、教育水準の交互作用を検討し、これらの交互作用が時間的傾向に及ぼす影響を解析するとともに、血管リスク因子および心血管疾患の影響の評価を行った。

寄与因子は不明、1次、2次予防が重要
 ベースラインの各時期の平均年齢は69~72歳(傾向検定:p<0.001)、範囲は60~101歳で、女性が56~59%(同:p<0.01)を占めた。各時期でMMSE(mini-mental state examination)スコアに差はなかった。

 371例が認知症を発症した。年齢と性別で補正した認知症の5年累積ハザード比(HR)は、第1期が100人当たり3.6、第2期が同2.8、第3期が同2.2、第4期は同2.0であり、経時的に低下した。相対的な発症率は、第1期に比べ第2期は22%減少し、第3期は38%、第4期は44%低下した。

 各時期と年齢、性別、APOEε4の交互作用が、認知症発症率の時間的傾向に影響を及ぼすことを示唆するエビデンスは認めなかった。一方、リスクの低下は高校卒業以上の集団にのみ認め(HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.67~0.88)、高校を卒業していない集団では有意差はなかった。

 肥満と糖尿病を除くほとんどの血管リスク因子の有病率と、脳卒中、心房細動、心不全関連の認知症リスクは、いずれも経時的に減少したが、これらの傾向だけでは認知症の発症率の低下を十分には説明できなかった。

 著者は、「認知症の発症率は30年間で経時的に減少したが、これに寄与した因子は同定されなかった」とまとめ、「認知症リスクを有する高齢者数の増加により、今後、認知症の疾病負担が爆発的に増大することが予測され、これを抑制するには1次および2次予防が重要と考えられる。本試験の結果は、認知症の予防あるいは少なくとも遅延の可能性という、わずかな希望をもたらすものだが、時間的傾向の理解の不十分さを強調するものでもあり、寄与因子のさらなる探索が求められる」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

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