医学論文の適格基準は、プロトコールを正しく反映しない

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/05/20

 



医学誌で公表された論文の多くは、患者を選定する適格基準(eligibility criteria)が、プロトコールで事前に規定された被験者集団の正確な定義を反映していないことが、ドイツ・フライブルグ大学医療センターのAnette Blumle氏らの調査で示された。これまでに、結果の記載に欠落がある無作為化試験の報告や、試験方法(無作為化の仕方など)に関する重要情報を欠く論文もあることが指摘されている。一方、被験者の正確な情報は、その試験結果が適用可能な同様の病態の患者を知りたいと考える読者にとって重要だが、試験参加者を選択する適格基準の記載状況についてはあまり知られていないという。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月5日号)掲載の報告。

プロトコールと論文の適格基準の一致、欠落、変更、追加を検討




研究グループは、ドイツの大学医学部の倫理委員会に申請された無作為化試験のプロトコールで事前に規定された参加者の適格基準が、その後、関連論文でどのように報告されたかを検討するコホート試験を実施した。

2000~2006年までに公表された52件の試験プロトコールと、これに基づく78編の論文の間の適格基準の一致、欠落、変更、新たな追加について評価した。

全プロトコールで、論文での適格基準情報の欠落を確認




52試験のすべてで、プロトコールとこれに基づく論文の間に差異がみられた。すなわち、論文における適格基準情報の欠落が52件のプロトコールのすべてで確認され(100%、95%信頼区間:93~100%)、変更は44件(85%、同:72~93%)、新たな追加は21件(41%、同:27~55%)で認められた。

各試験における適格基準の平均項目数は25(7~43)であった。プロトコールで事前に規定された1,248項目の適格基準のうち、論文と一致したのは606項目(49%、同:46~51%)で、欠落が479項目(38%、同:36~41%)、変更は163項目(13%、同:11~15%)であった。プロトコールにない51項目が、論文で新たに追加されていた。

適格基準の多くが併存疾患(42%、95%信頼区間:39~45%)、治療(20%、同:18~22%)、疾患のタイプや重症度(17%、同:15~19%)に関するものであった。欠落していた適格基準の96%(同:94~97%)および変更された基準の54%(同:46~62%)が被験者集団の範囲をさらに広げるために行われ、新たな追加の86%(同:74~94%)は、これをより限定するために行われたことが示唆された。

著者は、「試験情報の利用者の多くは、公表された雑誌論文を信頼しているが、これらの論文は全般にプロトコールで事前に規定された被験者集団の正確な定義を反映していない」と結論づけ、「適格基準の不完全で不正確な報告は、試験結果の適用性の正確な評価を阻害する」と警告する。

(菅野守:医学ライター)