職場で怒りを表す人は評価されにくい

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/03/26

 

 職場で怒りをあらわにする人は評価されにくいことが、新たな研究で示された。研究グループは、「先行研究では、職場で怒りを表す人は有能と判断され、より高い地位を維持できることが示唆されていたが、今回の研究ではそれを否定する結果が示された」と説明している。ヘブライ大学(イスラエル)政治学・国際関係学分野のRoni Porat氏と米プリンストン大学のElizabeth Levy Paluck氏によるこの研究の詳細は、「Frontiers in Social Psychology」に2月13日掲載された。

 研究グループは今回、総計3,852人を対象にした4つの実験を通じて、職場で感情(怒り、悲しみ、感情を表さない)を実験的に操作し、その感情表現をする人が組織の中でどの程度の地位や権力、独立性、尊敬、年収を得るべきかを試験参加者に尋ねた。実験は、感情表現をする人物の性別だけでなく、感情を向ける対象(別の人物、別の状況)、感情を表すときの状況(面接、通常の就業日)も変えて検討した。

 その結果、実験参加者は、怒りを表す人は地位が高いと推測しながらも、そのような怒りは職場での目標を達成する上で不適切かつ冷淡で過剰反応であり、非生産的であると見なし、怒りによって地位の向上を得られるものではないと考えていることが明らかになった。また参加者は、職場で怒りをあらわにすることに対して否定的な考えを持っており、怒りの表現は他の感情的な反応と比べてより有害でばからしく、無価値なものと捉えられていた。

 こうした結果を受けてPorat氏は、「われわれは、怒りは職場での地位向上をもたらさないことを明らかにした。さらに、今回の研究から、怒りは悲しみのような他の感情表現よりも低く評価されることが示された」とヘブライ大学のニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「怒りが肯定的に評価されるのは、明らかに誤った行動をした人に対して怒りを表す場合だけだ。これらの研究結果は、男女を問わず職場で怒りを表すことのある人に当てはまる」と説明している。

 興味深いことに、この研究では、性別の違いにより怒りの表現に対する反応は左右されないことが示された。Porat氏は、「この分野で影響力のある研究の結果とは異なり、女性の怒りが男性の怒りとは違った形で捉えられることはなかった」と述べ、「一見すると、これらの結果は、性別と職場での怒りに関する他の多くの研究と矛盾しているように思われる。このような矛盾が生じた背景には、過去の研究が実施されたときと現在とでは、怒りの表現に関する性別の規範が変化した可能性があること、また、今回の実験で用いたサンプルが過去の研究のサンプルと異なっていたことが考えられる。ただ、これらの説明では、説得力に欠けるだろう」と話している。

[2024年2月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら