ストレスや託児所不足を理由に多くの医師が離職

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/03/25

 

 長時間で変動も多い勤務時間に対応可能な託児所を見つけることの困難さや育児にかかる費用が、子どもを持つ医師の大きなストレスのもととなっていることが、英国で実施された新たな調査から明らかになった。フリーランスのヘルスケアジャーナリストであるErin Dean氏がまとめたこの調査結果は、「The BMJ」に2月14日掲載された。調査結果からは、すでに医師を辞めたか辞めることを考えている人、より柔軟な働き方ができるように専門分野を変えた人、子どもを持つ計画を変更した人のいることが浮き彫りになったという。

 この調査結果は、bmj.com上で2023年11月16日から30日の間に実施されたThe BMJ Childcare Survey(BMJチャイルドケア調査)に参加した596人(女性548人;指導医204人、研修医/若手医師231人、一般医95人、医学部生3人、看護師14人、研究者10人、その他39人)の回答に基づいている。

 回答を分析した結果、回答者の93%は、自分の仕事のスケジュールに適した託児所を見つけるのに大変な思いをしたと回答していた。91%の回答者が挙げた最も大きな問題は、始業から終業までの間、子どもを預かってくれる場所を見つけることであり、多くの回答者が、朝、遅刻せずに出勤することや仕事の後に子どもを迎えに行くことにストレスと罪悪感を感じていると訴えていた。2人の子どもを持つ回答者の1人は、「利用している学校のラップラウンドケア(授業以外の時間帯に提供される子どものためのサポートサービス)は朝の8時から夕方の6時までだけだ。私の住んでいる地域には他に選択肢がない。そのため、私は常に仕事に遅刻し、子どもを迎えに行くためにできる限り効率的に働いて仕事をこなすか、他の人を頼らなければならない。1日の中で最もストレスを感じるのは子どもを迎えにいくときだ。仕事を早めに切り上げなければならないことを後ろめたく思うし、いつも最後まで残っている子どもに対しても申し訳なく感じている」と話す。

 次に多く挙げられた問題は費用に関する問題であり(75%の回答者)、不規則なスケジュール(65%の回答者)がそれに続いた。育児にかかる費用は住宅ローンよりも高く、しばしば自分が稼ぐ以上の額になることを報告する医師も少なくなかった。例えば、4人の子どもを持つ若手医師は、自身の収入より1,255ドル(1ドル150円換算で18万8,250円)高い、月額5,021ドル(75万3,150円)を託児所に支払っていることを報告した。また、育児費用のために医師を辞めることを考えている人や、専門を変えた人がいることも明らかになった。元外科医は、「博士号を取得したが、子どもが2人いるため夜間のオンコールに対応するためのトレーニングを受けることができず、医師を辞めた」と話したという。

 研修医/若手医師では、71%がさまざまな専門分野を学ぶためのローテーション(一定期間、特定の診療所や病院に勤務すること)が、さらなる問題を引き起こしていると回答した。また、82%は不規則な勤務時間も障壁となっていることを挙げた。多くの回答者が、家族を増やしたいと考えているが、どうすれば託児所を見つけられるのか、それにかかる費用をどうやって捻出するかを想像することができないと答え、10人に7人近くが、育児に関する懸念が家族計画に影響を及ぼしていると答えた。

 英国の労働者団体であるBMAのLatifa Patel氏は、「この数字にはがっかりした。育児に関する選択肢の少なさと驚くほど高額な費用が、医師とその家族に与えている深刻な影響を反映した数字だ」と述べている。

 Patel氏は英国政府に対し、社会を支えているキーワーカーのための育児環境を早急に改善し、英国の国民保健サービス(NHS)の託児所を支援するよう求め、さらに、医師が働き続けられるよう財政的な支援も検討するべきだと主張している。同氏は、「社会から必要とされている医師が、育児の選択肢がないためにストレスに苦しみ、病気休暇を余儀なくされたり、完全に離職したりするのを政府が黙って見ているのは、経済的に見て全く理にかなっていない」と話している。

[2024年2月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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