スマートウォッチが子どもの隠れた不整脈を検出

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/01/19

 

 Connor Heinzさんは12歳のときから動悸を感じるようになったが、医師はその原因究明に苦慮していた。Connorさんが装着していた心臓のモニタリングデバイスは使い心地が悪く、また、不整脈が起こる頻度は数カ月間に1回程度だったため、問題を特定することが難しかったのだ。Connorさんの心臓の問題が何なのか、主治医には見当がついていたが、それを確かめたいと考えていた。そこで主治医は、Connorさんに母親のスマートウォッチを付けてもらうことにした。研究グループによると、小児の心疾患の診断に役立てることを目的としたスマートウォッチの使用は、心臓専門医の間で急速に普及しつつあるという。

 研究グループが、米スタンフォード・メディシン・チルドレンズ・ヘルスの2018~2022年の医療記録データを分析したところ、スマートウォッチ(Apple Watch)を使用した18歳以下の小児145人中41人(平均年齢13.8±3.2歳)で不整脈が検出されていた。このうち18人についてはスマートウォッチを使用して心電図データが収集され、また23人が心拍数の上昇を知らせるスマートウォッチの通知を受け取っていた。スマートウォッチからの情報を受け取った医師が行った精密検査により、29人(71%)で不整脈の新規診断に至っていた。そのうち10人(29%)については、従来の方法では検出できなかった不整脈がスマートウォッチにより診断できていた。この分析結果は、「Communications Medicine」に12月13日掲載された。

 論文の上席著者である、スタンフォード・メディシンのScott Ceresnak氏は、「標準的なモニタリングでは検出されなかったがスマートウォッチで検出された不整脈の多さに驚いた。新しい技術によって患者のためにできるケアに違いが生まれていることを目の当たりにするのは、素晴らしいことだ」と言う。

 Ceresnak氏はConnorさんの主治医で、Connorさんもこの研究の対象となった小児患者の一人だった。Connorさんの母親であるAmy Heinzさんは、「バスケットボールのトライアウトで彼はまた発作を起こしました。私は息子の腕にスマートウォッチを装着し、心拍データのキャプチャをCeresnak先生にメールで送信しました」と振り返る。

 Ceresnak氏はConnorさんの心臓の問題は上室性頻拍ではないかと疑っていたが、スマートウォッチから得られた情報によって、それが確認された。上室性頻拍とは心臓に異常な電気回路が存在するために心臓のリズムが異常に速くなる不整脈の一種である。Ceresnak氏によると、研究の対象となった小児のほとんどがConnorさんと同じタイプの不整脈だったという。

 Ceresnak氏は、「こうした不整脈は生命を脅かすものではないが、問題となることはあるし、子どもに恐い思いをさせる。そのため、ウェアラブルデバイスによって不整脈の正体を突き止めることができるのは大きな支援となる」話している。

 不整脈は、心臓の異常な電気信号の発生部位を破壊するカテーテルアブレーションと呼ばれる治療法で治癒に導くことができる。Connorさんもカテーテルアブレーションを受け、15歳になった現在、カリフォルニア州メンローパークの高校のバスケットボールチームで活躍している。

 ただ、既存のスマートウォッチのアルゴリズムは成人の心臓パターンに基づいており、成人よりも心拍が速く、成人とは異なるタイプの異常なリズムを経験する小児に最適化されたものではない。Ceresnak氏らは、「今回の研究結果は、小児の不整脈の検出における既存のスマートウォッチ技術の有用性とともに、小児向けの心臓モニタリングのアルゴリズムを開発することの価値を示したものでもある」と説明している。

[2023年12月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら