プロスポーツチームを誘致した都市でインフルエンザによる死亡者数が増加

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/09/12

 

 プロスポーツチームを新たに誘致した都市では、インフルエンザによる死亡者数が急増するという研究結果が報告された。米ウェストバージニア大学ジョン・チェンバース・カレッジ・オブ・ビジネス&エコノミクスのBrad Humphreys氏らによる研究で、詳細は「Sports Economics Review」に6月8日掲載された。

 新しい都市にプロスポーツチームを誘致する際には、多額の税金が投入されることが多い。研究グループによると、2000年以降、米国の州政府や地方自治体は、新しいスタジアムの建設に200億ドル(1ドル143円換算で約2兆8600億円)近く、年間にするとおよそ10億ドル(同約1430億円)を投じてきた。これらの投資は、主に政府が債券を発行して調達した補助金で賄われている。

 Humphreys氏らは、米疾病対策センター(CDC)の54年間にわたる122都市でのインフルエンザによる死亡データと、NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)、MLB(メジャー・リーグ・ベースボール)のプロスポーツチームが都市に到着した日付およびこれらのリーグの試合開催期間のデータを収集。都市の人口、気温、降雨量、毎年流行するインフルエンザ株など、ウイルスの拡散に関連する要因を考慮して、両者の関連を検討した。

 その結果、1962年から2016年の間にプロチームを誘致した米国の都市では、チーム到着後にインフルエンザによる10万人当たりの死亡者数が4〜24%増加していたことが明らかになった。具体的には、NFLのチームがこれまでプロスポーツチームを抱えたことのない都市に移動してきたときには、インフルエンザによる死亡者数が平均で17%増加していた。これはインフルエンザにより年に約13人の超過死亡が生じたことを意味する。また、NBAのチームを新たに迎え入れた場合には、その都市のインフルエンザの死亡者数が平均して4.7%増加していた。影響が最も小さかったのはMLBチームを迎え入れた場合で、年に3人のインフルエンザによる超過死亡をもたらしていた。これとは反対に影響が最も大きかったのはNHLのチームを迎え入れた場合で、インフルエンザによる10万人当たりの死亡者数が24.6%増加していた。これは年に約20人の超過死亡に相当するという。

 論文の共著者である、ウェストバージニア大学のJane Ruseski氏は、「ホッケーチームを迎え入れることでインフルエンザによる死亡者がこれほど増える理由には、NHLのシーズンとチームが本拠を置く場所の両方が関係していると考えられる。NHLのシーズンは、インフルエンザのシーズンとほぼ完全に重なっている上に、NHLチームは寒冷地に本拠を構える可能性が高いからだ」と説明している。ただし、インフルエンザとスポーツリーグのシーズンの重なりが、インフルエンザによる死亡者数増加の主な要因であると断定することはできないと同氏は言う。

 一方Humphreys氏は、「スポーツチームがある都市の人々は、チームがない都市の人々よりも病気になる可能性が高いことが、この研究で示された。この結果は、プロスポーツイベントの開催に関するわれわれの考え方を変える可能性がある」と指摘する。そして、「納税者が、プロスポーツチームのせいで病気になり、医療制度に負担をかけ、仕事を休むことで企業の収益に悪影響を与え得ることを理解すれば、プロスポーツ施設に補助金を出すことに消極的な姿勢を示すようになるだろう」と話している。

 論文の筆頭著者である米オールド・ドミニオン大学のAlexander Cardazzi氏は、「同様の傾向が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にも当てはまる可能性が高い」との見方を示す。同氏は、「スタジアムやアリーナで開催されるスポーツイベントでは、大勢の人々が至近距離に集まる。これらの観客は、手であちこちの環境表面に触れ、話したり大声を出したり、ハイタッチなどで人と接触をする」と述べ、このような行動がインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの拡散につながると話している。

[2023年8月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら