せっけん手洗いで、低中所得国の急性呼吸器感染症が減少/Lancet

低中所得国において、せっけんによる手洗い励行の介入は急性呼吸器感染症(ARI)を減少可能であることが示された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Ross氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ARIは、世界的に罹患および死亡の主な原因で、ARIによる死亡の83%は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以前の低中所得国で発生していたという。結果を踏まえて著者は、「低中所得国においてせっけんによる手洗いはARIによる大負荷を防ぐのに役立つと考えられる」とまとめている。Lancet誌2023年5月20日号掲載の報告。
低中所得国におけるせっけん手洗いに関する研究26件についてメタ解析
研究グループは、MEDLINE、Embase、Web of Science、Scopus、Cochrane Library、Global Health、Global Index Medicusを用いて、2021年5月25日までに発表された低中所得国におけるせっけんによる手洗いに関する研究を検索し、家庭、学校または保育の場で実施された介入の無作為化および非無作為化比較研究を特定し、システマティックレビューとメタ解析を行った。せっけんによる手洗い以外の手指衛生励行の介入、および医療施設や職場における介入は除外された。主要アウトカムは、あらゆる病原体に起因するARI罹患率。副次アウトカムは、下気道感染症、上気道感染症、診断検査で確認されたインフルエンザ、診断検査で確認されたCOVID-19、および全死因死亡であった。
研究結果の統合にはランダム効果メタ解析を、異質性の評価にはメタ回帰を用い、相対リスク(RR)を算出した。個々の研究のバイアスリスクはNewcastle-Ottawaスケールを用いて評価し、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)を用いてエビデンスの確実性を評価した。
適格基準を満たした26件の研究(合計16万1,659例)から、27件の比較(無作為化比較は21件)が解析に組み込まれた。
せっけん手洗い励行で、急性呼吸器感染症罹患率は低下
せっけんによる手洗い励行の介入は、手洗いなしと比較してARIを減少させた(RR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.76~0.90、I2:88%、27件)。副次アウトカムについては、下気道感染症(RR:0.78、95%CI:0.64~0.94、I2:64%、12件)および上気道感染症(0.74、0.59~0.93、91%、7件)は減少したが、インフルエンザ(0.94、0.42~2.11、90%、3件)、COVID-19(比較なし)および全死亡(死亡率比:0.95、95%CI:0.71~1.27、1件)は抑制しなかった。
ARIの異質性共変量に有意性は認められなかった(p<0.1)。GRADE評価によるエビデンスの質は「中」であった。
(ケアネット)
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低中所得国において、せっけん手洗いによる介入は急性呼吸器感染症(ARI)の減少に寄与する(解説:寺田教彦氏)
コメンテーター : 寺田 教彦( てらだ のりひこ ) 氏
筑波大学 医学医療系 臨床医学域 感染症内科学 講師
筑波メディカルセンター病院臨床検査医学科/感染症内科