小児の注意欠如多動症(ADHD)は、日本において増加傾向にある神経発達障害である。ADHDの治療において、薬物療法は重要な治療法の1つであるにもかかわらず、ADHD治療薬の処方実態はこれまで十分に解明されていなかった。北里大学の鈴木 龍太郎氏らは、日本の17歳以下の小児および青年におけるADHD治療薬の処方パターンを調査し、性別、年齢、診療科といった患者背景に基づいて薬剤選択の傾向を分析した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年5月14日号の報告。
本研究は、日本の大規模健康保険請求データベースを用いたレトロスペクティブデータベース研究である。2018年4月~2023年8月のADHD治療薬の処方パターンを分析した。4種類のADHD治療薬(徐放性経口メチルフェニデート[OROS-MPH]、アトモキセチン[ATX]、グアンファシン[GXR]、リスデキサンフェタミン[LDX])のそれぞれについて、患者における処方割合、併用パターン、新規処方割合を、異なる人口統計学的グループおよび診療科別に検討した。処方割合の経時的変化を評価するため、Jonckheere-Terpstra傾向検定を用いた。精神科と非精神科での診療における単剤療法処方割合の時系列データを比較するために、マン・ホイットニーのU検定を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・2018~23年にかけて、OROS-MPHの処方割合は64.7%から47.5%へと有意に減少した。
・一方、GXRの処方割合は19.3%から46.4%へと有意に増加した。
・GXRは、女児および6~12歳の小児に最も多く処方されていた。
・新規患者においては、2019年後半以降、GXRの処方割合がOROS-MPHの処方割合を上回り始め、2023年には新規処方の41.3%を占めるようになった。
・単剤療法を受けている患者の割合は82.3%から79.6%に減少し、OROS-MPHとGXRの併用療法が最も一般的であった。
著者らは「日本では、GXRのADHD治療薬として使用頻度が増加しており、とくに女児および6~12歳の小児においてその傾向が顕著であった。2019年後半以降、GXRの新規処方数はOROS-MPHを上回っている。この傾向は、GXRが中枢神経刺激薬と同様の流通規制の対象とならないことや、他のADHD治療薬とは異なる独自の薬理作用機序を持つことに起因すると考えられる。治療選択肢が進化し続ける中で、処方慣行の継続的なモニタリングが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)