近年の睡眠薬の処方は、ベンゾジアゼピン系薬剤から、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)やメラトニン受容体作動薬などの非GABA作動性睡眠薬へと移行している。獨協医科大学の佐々木 太郎氏らは、自殺企図に関与する睡眠薬の影響が状況依存的、経時的に変化するかどうかを調査した。Neuropsychopharmacology Reports誌2026年6月号の報告。
本研究は、多施設共同レトロスペクティブコホート研究として実施された。日本の3つの医療機関に2020年4月〜2025年3月の間に自殺企図で受診した患者を連続して登録した。受診時に回収した空の薬剤パッケージから、自殺企図に関与した睡眠薬を特定した。ベンゾジアゼピン系薬剤および非GABA作動性睡眠薬(DORAおよびメラトニン受容体作動薬)の年間使用割合を、すべての自殺企図、過剰摂取に関連する自殺企図、睡眠薬が関与した過剰摂取に関連する自殺企図の3つの条件でコクラン・アーミテージ傾向検定を用いて分析した。さらに、DORAとメラトニン受容体作動薬を分けて、それぞれ分析した。
主な結果は以下のとおり。
・自殺企図1,111件のうち、648件が過剰摂取に関連するものであった。
・非GABA作動性睡眠薬の使用は、3つのすべての条件において、経時的に有意な増加を認めた。
・一方、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用は、過剰摂取に関連する自殺企図においてのみ有意な減少が認められた。
・非GABA作動性睡眠薬を細分化すると、DORAの関与は、過剰摂取に関連する自殺企図(χ2=7.3048、p=0.006877)およびすべての自殺企図(χ2=7.6384、p=0.005714)の両方で有意な増加傾向を示した。
・メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)の関与は、いずれの分析においても有意な経時的変化を示さなかった。
・全体として、非GABA作動性睡眠薬の関与の増加は主にDORAによるものであった。
著者らは「研究期間中、自殺企図に関与した睡眠薬は状況依存的に変化した。非GABA作動性睡眠薬の増加はDORAによって引き起こされたが、ベンゾジアゼピン系薬剤の関与の減少は過剰摂取関連の状況でのみ検出された。これらの結果は、睡眠薬の入手可能性の変化が、self-poisoningに関与する薬剤のプロファイルに影響を与える可能性を示唆している」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)