統合失調症患者における抗精神病薬と併用した中長期の漢方薬の使用が、メタボリックシンドローム(MetS)に及ぼす影響を評価し、これらの患者におけるMetSの有病率および関連する影響因子を明らかにするため、中国・Fujian Psychiatric CenterのJing-Shuang Zhang氏らは、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Frontiers in Pharmacology誌2026年3月17日号の報告。
2022~24年に統合失調症と診断され精神科病院に入院中の患者897例(平均年齢:47.68±14.67歳)を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象患者は18歳以上、服薬順守が良好で、入院期間が6ヵ月以上の患者とした。入院中の漢方薬使用状況に基づき、対象患者を漢方薬使用群と非使用群に分け、両群のアウトカム、とくにMetSの発症についてレトロスペクティブにフォローアップ調査を行った。単変量解析を用いて潜在的な交絡因子をスクリーニングした後、多変量ロジスティック回帰分析を行い、交絡因子の影響を調整した。最後に、曝露因子が研究結果に及ぼす影響を評価し、オッズ比(OR)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・漢方薬使用群は897例中163例(18.17%)であった。また、MetSを発症した患者は247例(27.53%)であった。
・漢方薬使用群におけるMetSの有病率は17.18%であったのに対し、非使用群では29.84%であった。
・漢方薬使用群では、非使用群と比較し、中心性肥満(29.5% vs.39.8%)および高血糖(13.50% vs.21.8%)の有病率が低かった。
・二項ロジスティック回帰分析の結果、MetSの発症と独立して関連していた因子は、学歴、漢方薬、クエチアピン、クロザピン、リスペリドン、アリピプラゾールの使用、BMIであった。
・学歴の低い患者(9年以下)と比較し、学歴が高い患者(12年超)では、MetS発症リスクが低かった(OR:0.45、95%信頼区間[CI]:0.25~0.81、p<0.01)。
・非使用群と比較し、中長期(6ヵ月以上)の漢方薬使用はMetS発症リスクを低下させることが示された(OR:0.50、95%CI:0.30~0.83、p<0.01)。
・リスペリドン(OR:0.54、95%CI:0.36~0.83、p<0.01)およびアリピプラゾール(OR:0.39、95%CI:0.21~0.72、p<0.01)を使用している患者は、ほかの抗精神病薬を使用している患者と比較し、MetSの発症リスクが比較的低かった。
・薬剤の種類により、MetS発症率の程度は異なっていた。
・BMIが高いほど、MetS発症リスクが増加するという正の相関が認められた(OR:1.39、95%CI:1.32~1.46、p<0.001)。
・クエチアピンまたはクロザピンを使用していない患者と比較し、クエチアピン(OR:1.86、95%CI:1.11~3.13、p<0.05)またはクロザピン(OR:1.74、95%CI:1.14~2.68、p<0.05)を使用している患者では、MetSの発症リスクが増加した。
著者らは「入院中の統合失調症患者では、一般的にMetSの発症が認められた。クエチアピン、クロザピンの使用およびBMIの増加は、MetSの有意なリスク因子であることが示唆された。一方、漢方薬、アリピプラゾール、リスペリドンの使用および高学歴は、MetSの発症に対する保護因子であった」とし「統合失調症患者においてMetSの発見と予防は不可欠である。長期的な漢方治療はMetSの発症率を低下させ、慢性期統合失調症患者にとってより良い治療選択肢と方向性に寄与する可能性がある」とまとめている。
(鷹野 敦夫)