岩手医科大学の伊藤 ひとみ氏らは、日本人統合失調症患者における自殺念慮の出現時期、自殺企図の重症度、これらに関連する因子の調査を行った。PCN Reports誌2025年7月6日号の報告。
対象は、2003〜21年に自殺企図のため救急外来を受診した統合失調症患者273例。自殺念慮の出現時期に基づき、同日群または同日前群のいずれかに分類した。受診時に観察された患者の人口統計学的特徴および精神症状に関するデータを収集した。また、自殺の動機および自殺企図手段に関するデータを分析し、自殺念慮の出現時期、自殺企図手段の重症度、関連因子との関係を検証した。
主な結果は以下のとおり。
・同日前群は、同日群と比較し、高度な自殺企図手段を選択する可能性が有意に高かった(p=0.03)。
・同日群では、高度な自殺企図手段の選択と幻覚・妄想に関連する自殺動機との間に強い正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.01、95%信頼区間[CI]:1.01〜4.03、p=0.049)。
・一方、同日前群では、過去1年間の自殺企図歴と高度な自殺企図手段の選択との間に負の関連が認められた(OR:0.32、95%CI:0.12〜0.86、p=0.023)。
著者らは「日本人統合失調症患者における自殺リスクの評価と介入戦略の強化について重要な知見が明らかとなった。自殺念慮の出現時期は、自殺企図の重症度に有意な影響を及ぼすことが示唆された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)