子供の自殺念慮に至る2つの経路が明らかに

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/07/31

 

 自殺念慮は、若者の間で大きな問題となっている。発達過程における軌跡と関連するメンタルヘルス症状については、これまで十分に解明されていなかった。カナダ・McGill UniversityのMarie-Claude Geoffroy氏らは、思春期初期から若年成人期における自殺念慮の軌跡を調査し、最適な予防策を検討するため、先行または併発するメンタルヘルス症状の特定を試みた。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月2日号の報告。

 参加者、保護者、教師を含む最新の縦断的コホート研究であるカナダ・ケベック州児童発達縦断研究(QLSCD)のデータを用いて検討を行った。QLSCDは、同州で1997〜98年に生まれた2,120人の単胎児を対象とした人口ベースの出生コホート研究で、2023年(25歳)までフォローアップ調査が行われている。データ分析は、2024年9月〜2025年2月に実施した。主要アウトカムは、過去12ヵ月間の重篤な自殺念慮の有無とし、参加者への質問票により評価した(13、15、17、20、23、25歳時)。調査対象は、親および教師によるメンタルヘルス症状の報告(内向性、外交性など)、検証済み質問票を用いた自己報告とし、5つの発達段階(就学前:3〜5歳、児童期:6〜12歳、思春期前期:13歳、思春期中〜後期:15〜17歳、若年成人:20〜25歳)で標準化した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者は1,635人(女性:845人[51.7%]、選択的脱落を考慮し重み付け)、自殺念慮について回答し、重み付けが適用された。
・次の3つの経路が特定された。
 ●自殺念慮が最小限/まったくない:1,433人(87.6%)
 ●思春期前期に出現:117人(7.1%)
 ●若年成人期に出現:86人(5.2%)
・自殺念慮が思春期前期に出現した群は、最小限/まったくない群と比較し、小児期から成人期にかけて、ほぼすべてのメンタルヘルス症状の上昇との関連が認められた。
・思春期前期の自殺念慮の出現には、児童期の抑うつ症状などの内向性症状(リスク比[RR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.45〜2.05)、児童期の破壊的症状などの外交性症状(RR:1.60、95%CI:1.29〜1.91)、母親の反社会的症状(RR:1.39、95%CI:1.11〜1.66)が関連していた。
・対照的に、若年成人期における自殺念慮の出現には、思春期中〜後期の抑うつ症状などの思春期にみられる内向性症状(RR:1.84、95%CI:1.28〜2.39)、若年成人期の精神的苦痛の悪化が関連していた。

 著者らは「本研究により、若者の自殺念慮に至る2つの経路が明らかとなった。1つは思春期前期に出現し、児童期の内向性/外交性症状が持続する経路、もう1つは若年成人期に出現し、それまでの苦痛を伴わず児童期に内向性症状がみられる経路である。これらの結果は、メンタルヘルス症状への適切な対応と発達段階に応じた予防策の必要性を示唆している」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)