統合失調症の陰性症状は、抗精神病薬への治療反応性が低く、生活の質を著しく低下させる。統合失調症に対する運動介入は、非薬物療法的な補助的戦略となりうる可能性があるが、異なる種類の運動の相対的な有効性は依然として不明である。中国・Hunan Applied Technology UniversityのZixia Wang氏らは、成人統合失調症患者における陰性症状の改善に対する有酸素運動(AE)、レジスタンス運動(RE)、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた運動(AE+RE)、心身運動、ヨガの有効性を比較するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2025年8月7日号の報告。
メタ解析の対象とした研究は、成人統合失調症患者に対して、さまざまな構造化運動介入と対照群(運動なし/最小限)またはその他の運動介入を比較したRCTとした。2024年9月までに報告された研究を5つのデータベースよりシステマティックに検索した。主要アウトカムは、陰性症状スコア(PANSS陰性症状尺度、SANS、BNSS)の変化とした。2人のレビュアーが独立して研究の選択、データ抽出を行い、バイアスリスクを評価した。ランダム効果ペアワイズメタ解析およびネットワークメタ解析において、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を算出した。SUCRA確率を用いて各介入のランク付けを行った。エビデンスの確実性の評価にはGRADEを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・32件のRCT(アジア:23件、欧州:6件、北米:2件、南米:1件)、1,773例を解析に含めた。
・運動介入の期間は、4〜24週間(中央値:12週間)であった。
・すべての運動介入において、対照群と比較し、陰性症状の改善が認められた。
【ヨガ】SMD=-1.14、95%CI:-1.54〜-0.75
【レジスタンス運動】SMD=-1.15、95%CI:-1.96〜-0.34
【有酸素運動】SMD=-0.79、95%CI:-1.13〜-0.46
【心身運動】SMD=-0.53、95%CI:-1.02〜-0.03
【AE+RE】SMD=-0.57、95%CI:-1.17〜0.04
・SUCRAによるランキングでは、ヨガが最も効果的な運動介入であることが示唆された。
【ヨガ】87.1%
【レジスタンス運動】82.1%
【有酸素運動】56.9%
【AE+RE】38.5%
【心身運動】34.4%
・サブグループ解析では、31〜40歳の統合失調症患者およびアジアで実施された研究において、より大きなベネフィットが示された(各々、p=0.022)。
・ネットワーク構造は良好に連結しており、有意な矛盾や小規模研究の影響は認められなかった。
・GRADE確実性による評価では、ほとんどの直接比較および間接比較において低く、SUCRAに基づくランキングにおいては中程度であった。
著者らは「統合失調症の陰性症状改善に対し、ヨガとレジスタンス運動が有効であることが、低〜中程度の確実性のエビデンスレベルで明らかとなった。年齢と地理的状況は治療効果に影響を及ぼすため、個別化された運動介入の必要性が示唆された。これらの知見を確認するためにも、より大規模で質の高いRCTが求められる」とまとめている。
(鷹野 敦夫)