経口と長時間作用型注射剤抗精神病薬の有用性~ネットワークメタ解析

長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、主に統合失調症の再発予防に期待して使用されるが、状況によっては急性期治療にも役立つ場合がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症成人患者に焦点を当て、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2024年6月号の報告。
対象薬剤は、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール、オランザピンおよびプラセボであり、経口剤またはLAIとして用いられた。17のその他の有効性および忍容性アウトカムにより補完し、全体的な症状に関するデータを統合した。エビデンスの信頼性の評価には、Confidence-in-Network-Meta-Analysis-framework(CINeMA)を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・分析には、115件のRCTより2万5,550例を含めた。
・すべての薬剤において、プラセボと比較し、標準化平均差(SMD)が有意に良好であった。
【オランザピンLAI】SMD:-0.66、95%信頼区間(CI):-1.00~-0.33
【リスペリドンLAI】SMD:-0.59、95%CI:-0.73~-0.46
【オランザピン経口】SMD:-0.55、95%CI:-0.62~-0.48
【アリピプラゾールLAI】SMD:-0.54、95%CI:-0.71~-0.37
【リスペリドン経口】SMD:-0.48、95%CI:-0.55~-0.41
【パリペリドン経口】SMD:-0.47、95%CI:-0.58~-0.37
【パリペリドンLAI】SMD:-0.45、95%CI:-0.57~-0.33
【アリピプラゾール経口】SMD:-0.40、95%CI:-0.50~-0.31
・有効性は、LAI抗精神病薬と経口剤との間で有意な差は認められなかった。
・主要アウトカムの症状全体の感度分析では、これらの所見がほぼ確認された。
・エビデンスの信頼性は、ほとんどが中程度であった。
・LAI抗精神病薬は、急性期統合失調症に対し有効であり、副作用の観点で経口剤と比較し、いくつかのベネフィットが期待できる可能性がある。
著者らは「臨床医が急性期統合失調症患者の治療を行う際、本結果は経口剤とLAI抗精神病薬のリスクとベネフィットを比較検討するうえで役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)
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