手術適応の直腸がん患者において、術前化学(ネオアジュバント)療法から手術まで12週間以上空けた群ではそうでない群に比べ、奏効率には違いがなかったものの、再発リスクの有意な低下などが示されたという。スペイン・バルセロナ大学のYoelimar Guzman氏らによる本コホート研究の結果はJAMA Surgery誌オンライン版2023年7月12日号に掲載された。
2005年1月~2020年12月にアジュバント療法を受け、直腸間膜全切除術(TME)を受けた成人の直腸がん患者1,506例を対象とした。コホートはアジュバント療法終了から手術までの時間によって、短期(8週間以内)、中期(8週間超12週間以内)、長期(12週間超)の3群に分けられた。追跡期間の中央値は33ヵ月で、データ解析は2021年5月1日~2022年5月31日に行われた。主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)、副次評価項目は病理組織学的結果、周術期イベント、および生存転帰であった。
主な結果は以下のとおり。
・1,506例のうち908例が男性(60.3%)で、年齢中央値は68.8(四分位範囲[IQR]:59.4~76.5)歳であった。短期群に511例(33.9%)、中期群に797例(52.9%)、長期群に198例(13.1%)が含まれた。
・全体のpCRは17.2%(259/1,506例、95%信頼区間[CI]:15.4~19.2%)であった。中期群と比較して、短期群(オッズ比[OR]:0.74、95%CI:0.55~1.01)および長期群(OR:1.07、95%CI:0.73~1.61)では、時間間隔とpCRとの間に関連は認められなかった。
・中期群と比較すると、長期群は奏効不良リスク(tumor regression grade [TRG]:2~3)の低下(OR:0.47、95%CI:0.24~0.91)、全身再発リスクの低下(ハザード比:0.59、95%CI:0.36~0.96)と関連していた。一方で、開腹手術への切り替えの増加(OR:3.14、95%CI:1.62~6.07)、軽度の術後合併症(OR:1.43、95%CI:1.04~1.97)、不完全な間膜切除(OR:1.89、95%CI:1.02~3.50)とも有意な関連があった。
著者らは、「ネオアジュバント療法から手術までの時間の違いはpCRとは関連しなかった。12週間超の長い間隔はTRGおよび全身再発リスクの改善と関連していた一方で、手術の複雑性が増し、軽度の術後合併症などの周術期イベントが増加する可能性がある」としている。
(ケアネット 杉崎 真名)