抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者における双極性障害への進展

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/23

 

 これまでの研究で、抗うつ薬耐性と双極性障害への進展には正の相関があるといわれている。しかし、この関連性に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ薬クラスの影響は、まだ調査されていない。台湾・国立陽明交通大学のJu-Wei Hsu氏らは、これらの関連性を評価するため本検討を行った。その結果、青少年から若年成人の抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者、とくにSSRIとSNRIの両方に対して治療反応が不十分な患者では、その後の双極性障害リスクが有意に高いことが確認された。European Neuropsychopharmacology誌2023年9月号の報告。

 対象は、青少年から若年成人の抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者5,285例(治療抵抗性うつ病群)、抗うつ薬で治療反応が認められたうつ病患者2万1,140例(反応群)。治療抵抗性うつ病群は、SSRIのみに抵抗性を示した群(2,242例、42.4%)と非SSRIにも抵抗性を示した群(3,043例、57.6%)に分けられ、サブグループ解析を実施した。双極性障害への進展は、うつ病と診断された日から2011年末までフォローアップを行った。

 主な結果は以下のとおり。

・治療抵抗性うつ病群は、反応群と比較し、フォローアップ期間中に双極性障害を発症する可能性が高かった(ハザード比[HR]:2.88、95%信頼区間[CI]:2.67~3.09)。
・非SSRIにも抵抗性を示した群では双極性障害リスクが最も高く(HR:3.02、95%CI:2.76~3.29)、次いで同リスクが高かったのはSSRIのみに抵抗性を示した群(HR:2.70、95%CI:2.44~2.98)であった。
・SSRIおよびSNRIに対する耐性およびその後の双極性障害への進展についての分子病態メカニズムを解明するためには、さらなる研究が求められる。

(鷹野 敦夫)