ADHD患者の不安症やうつ病の併発、その影響はどの程度か

提供元:ケアネット

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公開日:2023/05/10

 

 注意欠如多動症(ADHD)患者では精神医学的疾患の併発が多く、診断に難渋したり、治療のアウトカムおよびコストに影響を及ぼしたりする可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのJeff Schein氏らは、同国におけるADHDおよび不安症やうつ病を併発した患者の治療パターンとコストを調査した。その結果、不安症やうつ病を併発したADHD患者では、これらの併存疾患がない患者と比較し、治療変更が行われる可能性が有意に高く、治療変更の追加によるコスト増加が発生することが明らかとなった。Advances in Therapy誌オンライン版2023年3月13日号の報告。

 薬理学的治療を開始したADHD患者の特定には、IBM MarketScan Data(2014~18年)を用いた。最初に観察されたADHD治療の日付をインデックス日とした。併存疾患(不安症および/またはうつ病)のプロファイルは、ベースライン前6ヵ月間評価した。治療変更(中止、切り替え、併用、併用中止)は、治療開始後12ヵ月間調査した。治療変更に至るオッズ比(OR)を推定した。治療を変更した患者と変更しなかった患者において、調整された年間医療コストの比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者は17万2,010例(小児[6~12歳]:4万9,756例、青少年[13~17歳]:2万9,093例、成人[18歳以上]:9万3,161例)。
・不安症および/またはうつ病の有病率は、年代別に以下のとおりであり、小児期から成人期にかけて増加していた。
 【不安症】
  小児期:11.0%、青少年期:17.7%、成人期:23.0%
 【うつ病】
  小児期:3.4%、青少年期:15.7%、成人期:19.0%
 【不安症および/またはうつ病】
  小児期:12.9%、青少年期:25.4%、成人期:32.2%
・併存疾患がある患者は、併存疾患がない患者と比較し、治療変更の確率が有意に高かった。
 【不安症】
  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.19、成人期OR:1.19
 【うつ病】
  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.30、成人期OR:1.29
 【不安症および/またはうつ病】
  小児期OR:1.39、青少年期OR:1.25、成人期OR:1.21
・医療コストは、一般的に治療変更の回数が増えるほど高額であった。
・治療変更を3回以上行った場合の患者1人当たりの年間超過コストは以下のとおりであった。
 【不安症】
  小児期:2,234ドル、青少年期:6,557ドル、成人期:3,891ドル
 【うつ病】
  小児期:4,595ドル、青少年期:3,966ドル、成人期:4,997ドル
 【不安症および/またはうつ病】
  小児期:2,733ドル、青少年期:5,082ドル、成人期:3,483ドル

(鷹野 敦夫)