乳がん治療におけるタキサン3剤の末梢神経障害を比較

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/11/14

 

 乳がん治療におけるnab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルによる化学療法誘発性末梢神経障害の患者報告を比較したコホート研究の結果を、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのHongnan Mo氏らが報告した。化学療法誘発性末梢神経障害はnab-パクリタキセル群よりパクリタキセル群およびドセタキセル群で有意に少なく、nab-パクリタキセルでは主に感覚神経障害である手足のしびれ、パクリタキセルおよびドセタキセルでは主に運動神経障害および自律神経障害が報告された。また、感覚神経障害よりも運動神経障害のほうが早く報告されていた。JAMA Network Open誌2022年11月2日号に掲載。

 本研究は、2019~21年に中国全土の9つの医療センターで実施された前向きコホート研究である。対象は、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルベースのレジメンで治療を受けた入院中の浸潤性乳がん女性1,234例で、overlap propensity score weightingによる重み付けで評価した。2021年12月~2022年5月のデータを解析し、主要評価項目は欧州がん研究治療機関(ERT)のQOL調査票(感覚神経、運動神経、自律神経スケールの20項目)を用いた患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害とした。解析には、ベースラインの患者、腫瘍、治療の特性で調整した重回帰モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・1,234例の平均(SD)年齢は50.9(10.4)歳で、nab-パクリタキセルが295例(23.9%)、パクリタキセルが514例(41.7%)、ドセタキセルが425例(34.4%)だった。
・主な症状は、nab-パクリタキセル群では感覚神経に関連する手足のしびれ(81.4%)が多く、パクリタキセル群およびドセタキセル群では運動神経障害(例として、脚力低下はパクリタキセル群47.2%、ドセタキセル群44.4%)、自律神経障害(例として、目のかすみはパクリタキセル群45.7%、ドセタキセル群43.6%)が報告された。
・運動神経障害は、感覚神経障害より早い時期に報告され、症状発現までの中央値はnab-パクリタキセル群0.4週間(95%信頼区間[CI]:0.4~2.3)、パクリタキセル群2.7週間(同:1.7~3.4)、ドセタキセル群5.6週間(同:3.1~6.1)であった。
・患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害のリスクは、nab-パクリタキセル群に比べてパクリタキセル群(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.41~0.87、p=0.008)とドセタキセル群(HR:0.65、95%CI:0.45~0.94、p=0.02)で低く、感覚的不快感も、nab-パクリタキセル群と比べて、パクリタキセル群(HR:0.44、95%CI:0.30~0.64、p<0.001)およびドセタキセル群(HR:0.52、95%CI:0.36~0.75、p<0.001)で低かった。しかし、運動神経障害や自律神経障害を報告するリスクは、nab-パクリタキセル群に比べ、パクリタキセル群、ドセタキセル群が低くはなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)