HR+/HER2+進行乳がんへのアベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント、OS最終結果(monarcHER)/ESMO2022

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/15

 

 ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陽性(HR+/HER2+)の進行乳がんに対する、アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラントの3剤併用療法が、トラスツズマブ+化学療法と比較して数値的に全生存期間(OS)を改善した。フランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で第II相monarcHER試験の最終解析結果を発表した。

 同試験については、すでに主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を3剤併用群で有意に改善したことが報告されている1)

・対象:HR+/HER2+進行乳がんで、抗HER2療法を2ライン以上受けており(T-DM1とタキサン系抗がん剤の治療歴は必須)、さらにCDK4/6阻害薬とフルベストラントは未投与である患者237例
・試験群:アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント(ATF群)またはアベマシクリブ+トラスツズマブ(AT群)
・対照群:トラスツズマブ+主治医選択の化学療法(TC群)
・評価項目:
[主要評価項目]ATF群とTC群における主治医評価による無増悪生存期間(PFS)の比較
(ATF群とTC群の比較で有意差が認められた場合、次にAT群とTC群の比較をする段階的な設定)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性、患者報告アウトカム、体内薬物動態 

 主な結果は以下のとおり。

・2016年5月~2018年2月に14ヵ国、75施設から患者が登録された。
・追跡期間中央値は52.9ヵ月であった(データカットオフ2022年3月31日)。
・OS中央値はATF群31.1ヵ月、AT群29.2ヵ月、TC群20.7ヵ月だった。ATF群vs.TC群のハザード比(HR):0.71(95%信頼区間[CI]:0.48~1.05、両側p=0.086)、AT群vs.TC群のHR:0.84(95%CI:0.57~1.23、両側p=0.365)。
・事前設定されたすべてのサブグループにおいて、アベマシクリブ投与によるOSベネフィットが観察された。
・乳がんの内因性サブタイプが予後に与える影響を評価するため探索的RNAシーケンス解析が行われ、luminalタイプはnon-luminalタイプと比較して、より長い PFS(8.6ヵ月vs. 5.4ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.79)、およびOS(31.7ヵ月vs.19.7ヵ月、HR :0.68、95%CI :0.46~1.00)と関連していた。
・更新された PFS および安全性は、1次解析結果と一致していた(データカットオフ2019年4月8日)。

 ディスカッサントを務めた韓国・Asan Medical CenterのSung-Bae Kim氏は、この化学療法を行わない3剤併用療法が複数治療歴のあるHR+/HER2+進行乳がんの治療オプションの1つになることが示唆されたとコメントした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)