ctDNAは再発率を上げずに結腸がんの術後補助療法を減らせるか(DYNAMIC)/ASCO2022

StageII結腸がんの術後補助療法において、循環腫瘍DNA(ctDNA)ガイド下でのアプローチは、標準アプローチと比べ、再発リスクの非劣勢を示すとともに、同療法の実施率を減らすことが示された。オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのJeanne Tie氏が米国臨床腫瘍学会年次集会(ASCO2022)で発表した。
ctDNAはStageII結腸がん術後症例の再発リスクををより正確に同定できるか
StageII結腸がんは手術のみで80%が治癒する。一方、術後補助療法については生存ベネフィットが明らかでないため、ガイドラインでは高リスク症例に考慮するよう推めている。しかし、高リスク症例では術後補助療法の成績は良好ではない。そのため、再発リスクをより正確に予測し、術後補助療法の恩恵が高い症例を明らかにしていくことが求められている。同時に恩恵が低い症例には不必要な治療を回避することも重要だとされる。そのような中、ctDNAによる術後再発リスク評価の研究が進んでいる。固形がんでは根治切除後にctDNA陽性を示す症例の場合、術後療法なしでの再発は80%以上とされている。このように術後のctDNA陽性と再発リスクの相関は認められているが、同集団への術後補助療法の意義は証明されていない。
DYNAMIC試験は術後ctDNAガイド下で術後補助療法を行うことで、再発リスクを損なうことなく術後補助療法の使用を減らせる、という仮説を評価する多施設無作為化第II相試験である。
対象は術後補助療法適用可能なR0切除後のStageIIの結腸がん患者。患者はctDNAガイド下または標準ガイド下に2対1で無作為に割り付けられた。ctDNAガイド下群では、手術後4週、7週のctDNAを検査し、陽性であれはオキサリプラチンベースまたはフルオロピリミジンの術後補助療法が行われた。 ctDNA陰性症例には術後補助療法は行われていない。標準ガイド下群では、従来どおり臨床病理に基づき術後補助療法が行われた。有効性評価項目は2年無再発生存(RFS)率の非劣性、重要な副次的評価項目は術後補助療法の使用などである。
ctDNAガイド下アプローチで下がった術後補助療法実施率、再発リスクは変わらず
2015年8月~2019年8月に455例無作為化され、302例がctDNAガイド下に、153例が標準ガイド下に割り付けられた。追跡期間中央値37ヵ月の術後補助療法の実施率は、ctDNAガイド下群で15.3%、標準ガイド下では27.9%で、ctDNAガイド下群の術後補助療法実施が少なかった(オッズ比:2.14、p=0.002)。術後補助療法のレジメンは、ctDNAガイド下群では、フルオロピリミジンよりも有意にオキサリプラチンベースレジメンが多かった(62.2%対9.8%; p<0.001)。
2年RFS率は、ctDNAガイド下群では93.5%、標準ガイド下群では92.4%であった(差:1.1%、95%信頼区間[CI]:4.1〜6.2)。事前に設定された群間差の95%CI下限値である-8.5%を達成し、ctDNAガイド下群の非劣性が証明された。
サブグループ解析でもほとんどの項目で同等であったが、T4症例ではctCNAガイド下群が優勢だった。
さらに術後ctDNA陽性例と陰性例の3年RFSを比較した。術後ctDNA陽性例の3年RFSは術後補助療法を行って86.4%、ctDNA陰性例の3年RFSは術後補助療法行わずに92.5%であった。
StageIIの結腸がんへのctDNAガイド下のアプローチは、再発率を損なうことなく術後補助療法の使用を減らした。また、術後療法なしでは80%以上が再発するとされている術後ctDNA陽性例において、術後補助療法を受けた症例の3年RFSは8.4%と良好であることから、この集団は術後補助療法の恩恵を受けると考えられる。術後ctDNA陰性例では術後補助療法を行わなくても、3年RFSは92.5%と再発は少なかった。
StageII結腸がん術後補助療法におけるctDNAの役割を探る、今後の臨床試験の結果を待ち望む、と発表者のTie氏は締めくくった。
(ケアネット 細田 雅之)
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