母親の育児ストレスと子供のADHDとの関連~日本の出生コホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/06

 

 注意欠如多動症(ADHD)は幼児期に発症し、その後、生涯にわたり影響を及ぼす疾患であるが、早期診断や介入により、臨床アウトカムの最適化を図ることができる。長期的または過度な育児ストレスは、ADHDなどの発達障害に先行してみられる乳児の行動の差異に影響している可能性があることから、幼少期の定期的評価には潜在的な価値があると考えられる。東京都医学総合研究所の遠藤 香織氏らは、母親の育児ストレスが子供のADHDリスクのマーカーとして利用可能かを明らかにするため、出産後1~36ヵ月間の母親の育児ストレスとその子供の青年期初期におけるADHDとの関連について、定期的に収集した自己報告を用いて調査を行った。その結果、出産後9~10ヵ月、18ヵ月、36ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連が認められ、自己報告による育児ストレスのデータはADHDリスクの初期指標として有用である可能性が示唆された。このことから著者らは、ADHDの早期発見と介入を促進するためにも、幼少期の健康診断、育児ストレスの評価、家族のニーズに合わせた支援を行う必要があることを報告している。Frontiers in Psychiatry誌2022年4月28日号の報告。

 子供の成長プロセスに関する調査「東京ティーンコホート」の人口ベース出生コホート研究から子供2,638人(女児:1,253人)のサンプルを抽出し、その母親には、母子健康手帳を用いた出産後1~36ヵ月間における育児ストレス5回の記録を求めた。9年後、「子供の強さと困難さアンケート(SDQ)」の多動性/不注意のサブスケールを用いて、12歳時点でのADHD症状を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・出産後36ヵ月間で、育児ストレスを報告していた母親は、約7.5%であった。
・12歳時点でADHD症状のカットオフ値を超えていた子供は、6.2%であった。
・1ヵ月および3~4ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連は認められなかった。
・12歳時点での子供のADHD症状と有意な関連が認められた育児ストレスの時期は、9~10ヵ月(未調整OR:1.42、p=0.047、95%CI:1.00~2.00)、18ヵ月(同:1.57、p=0.007、95%CI:1.13~2.19)、36ヵ月(同:1.67、p=0.002、95%CI:1.20~2.31)であった。
・これらの関連には、子供の性別、月齢、世帯収入で調整した後でも、変化は認められなかった。

(鷹野 敦夫)