オミクロン株に対するコロナ治療薬の効果を比較検証/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/02/22

 

 オミクロン株が世界中で猛威を振るう中、新型コロナウイルスの新たな治療薬の開発が進んでいる。国立感染症研究所の高下 恵美氏ら研究グループが、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでのオミクロン株に対する効果について検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年1月26日号のCORRESPONDENCEに掲載。

ソトロビマブ、tixagevimab・cilgavimab併用はオミクロン株に対して中和活性を維持

 今回、研究対象となった薬剤は、臨床試験中、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。検証の結果、抗体薬のetesevimab・bamlanivimab併用とカシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ)のオミクロン株に対する中和活性は、著しく低いことがわかった。それに対し、tixagevimab・cilgavimab併用とソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)は、オミクロン株に対して中和活性を維持していることが判明したという。抗ウイルス薬のレムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)は、オミクロン株の増殖を抑制することが示された。

 オミクロン株は、初期のSARS-CoV-2と比較して、スパイク蛋白に少なくとも33の変異を有していることが判明しているため、FDAで承認されているモノクローナル抗体は、オミクロン株に対して効果が低い可能性があることが示唆されていた。

 今回の検証では、7種類の抗体薬(etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブ)の単剤および併用について、オミクロン株の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するかどうかを、ライブウイルス焦点減少中和アッセイ(FRNT)を用いて、モノクローナル抗体の中和活性を評価した。

 etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤および併用について、オミクロン株に対する効果を検証した主な結果は以下のとおり。

・etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブの単剤使用では、最も高いFRNT50値(>5万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。
・カシリビマブは、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して高いFRNT50値(187.69~1万4,110.70ng/mL)で中和活性を示したが、オミクロン株に対するFRNT50値はベータ株に対して18.6倍、ガンマ株に対して75.2倍高かった。
・tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤使用は、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して中和活性を保持していたが、これらのFRNT50値は、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株は3.7〜198.2倍高かった。
・etesevimab・bamlanivimab併用では、ガンマ株に対する中和活性が著しく低下し、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、ベータ株とオミクロン株に対する中和活性は見られなかった。
・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に対する中和活性は維持されたが、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。
・tixagevimab・cilgavimab併用では、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対する中和活性は維持されたが、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株のFRNT50値は24.8倍~142.9倍高くなった。

 また、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、PF-07304814)について、50%阻害濃度(IC50)を測定したところ、レムデシビルとモルヌピラビルは、オミクロン株に対する有効性が高く、PF-07304814は、オミクロン株に対する有効性が低いことが判明した。

 本研究グループは、COVID-19治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するのかどうかを動物モデルで引き続き検証する予定だ。

(ケアネット 古賀 公子)