パキロビッドパック投与時の注意点、薬物治療の考え方13版/日本感染症学会

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/16

 

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、2月10日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第13版」をまとめ、同会のホームページで公開した。

 今回の改訂では、2月10日に製造販売に関し特例承認を取得した経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル錠/リトナビル錠(商品名:パキロビッドパック)などの追加記載が行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。

 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。

【3. 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】
・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」を変更

【4. 抗ウイルス薬等の選択】
・総論にニルマトレルビル/リトナビルを追加
・各薬剤につき、わが国で適用承認されている薬剤は商品名を追加
(抗ウイルス薬)
ニルマトレルビル/リトナビルの追加
・機序
ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼに作用し、その働きを阻害することによりウイルスの増殖を阻害する。リトナビルは、ニルマトレルビルの代謝を遅らせ、体内濃度をウイルスに作用する濃度に維持する目的で併用。
・国内外での臨床報告
国内外で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験において、重症化リスクのある非入院COVID-19患者の外来治療を対象にニルマトレルビル300mg/リトナビル100mgまたはプラセボを1日2回、5日間経口投与する群に1対1で無作為割付。
主要有効性解析集団とされたmITT集団のうちプラセボ群(385名)の28日目までの入院または死亡が27名(7.0%)に対し、治療群(389名)では3名(0.8%)と相対的リスクが89%減少した(p<0.0001)。また、被験者登録が中止されるまでに組み入れられたすべての被験者(2,246名)を対象とした解析の結果においては、mITT集団のうちプラセボ群(682名)の28日目までの入院または死亡が44名(6.5%)に対し、治療群(697名)では5名(0.7%)と、相対的リスクが89%減少となった。
*mITT集団:無作為化され、治験薬が1回以上投与され、ベースライン後から無作為化28日目までに少なくとも1回のVisitがあり、ベースライン時点でCOVID-19に対するモノクローナル抗体が投与されておらず投与の予定もなく、かつ、COVID-19の症状発現から3日以内に治験薬が投与された被験者の集団
・投与方法(用法・用量)
通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。
・投与時の注意点
1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。
2)本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていることなどを踏まえ、1)の「重症度リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者」としては、臨床試験における選択基準などに基づき、60歳以上、BMI25超、喫煙者などの重症化リスク因子を有する者が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。
3)重症度の高いCOVID-19患者(中等症II以上)に対する有効性は確立していない。
4) COVID-19の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
5) 本剤は併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため、服用中のすべての薬剤を確認すること。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を追加する場合、相互作用を確認すること。本剤を使用する際には、服薬中の薬剤や、新規に開始する薬剤との相互作用について、添付文書などを事前に確認する。
6) 中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min以上60mL/min未満)には、ニルマトレルビルとして1回150mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨しない。
・入手方法
本剤は、現状、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼に基づき、無償で譲渡される。

(中和抗体薬)
・カシリビマブ/イムデビマブの機序を追記したほか、投与時の注意点でオミクロン株での投与の推奨をしない旨の追記
・ソトロビマブの「国外での臨床報告」を追記

(免疫調整薬・免疫抑制薬)
・バリシチニブで「国内外での臨床報告」を独立して記載

 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。

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(ケアネット 稲川 進)

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