遺伝子操作したブタの心臓をヒトに移植、米国で世界初

米国・メリーランド大学医学部は1月10日付のリリースで、重度の心疾患を有する男性患者(57歳)に、遺伝子操作したブタの心臓を世界で初めて移植したと発表した。移植手術は7日に実施され、術後3日時点における患者の経過は順調という。今後、数週間にわたって慎重に経過観察される。今回の執刀医を務めたBartley Griffith氏は、「この画期的な手術は、臓器不足の危機の解決に一歩近づくものだ」と述べ、前例のない試みに対する手応えを示した。
リリースによると、男性患者は6週間前に不整脈で入院し、ECMOを使用していた。いくつかの主要な移植センターで、従来の心臓移植は不適応と見なされ、不整脈のため人工心臓も装着できなかった。ブタの心臓移植は、患者にとって唯一の治療の手段だったという。こうした経緯を踏まえ、米国食品医薬品局(FDA)が昨年12月31日、コンパッショネート・ユース制度(人道的使用)により移植手術を承認した。この制度は、深刻な身体障害や生命を脅かす病状に直面している患者が、利用できる唯一の選択肢である場合に特例的に使用が許可されるものだ。
今回の移植手術に当たり、バージニア州に本拠を置く再生医療会社であるRevivicorが、遺伝子組み換えブタを提供した。提供臓器は、XVIVO社(スウェーデン)が開発した還流装置を使って保護された。一方、外科チームは、異種移植による拒絶反応を防ぐために、米国のバイオ医薬品メーカーKiniksa Pharmaceuticals社製の新薬を使用した。
心臓の異種移植を巡っては、1980年代に初めて試みられた。1983年にヒヒの心臓を移植された幼児は、手術から1ヵ月以内に死亡した。しかし近年では、ウシやブタの心臓弁を、ヒトへの移植に使用することがすでに定着している。2021年9月と11月には、米国・ニューヨーク大学ランゴーン医療センターにおいて、遺伝子操作されたブタの腎臓の移植に成功している。
(ケアネット 古賀 公子)
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