大規模屋内ライブ、包括的介入でコロナ感染予防は可能か~無作為化比較試験

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/29

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)蔓延防止のため、2020年は多くの屋内で集まるイベントが禁止された。フランスにおけるSPRING研究(Study on Prevention of SARS-CoV-2 Transmission During a Large Indoor Gathering Event)グループでは、大規模な屋内集会イベントで、開催前3日以内の抗原検査、医療用マスクの着用、十分な換気などの包括的な予防的介入を実施した場合、参加者と非参加者の感染率が同等かどうかを非劣性試験で検証した。その結果、イベント参加とSARS-CoV-2感染リスクに関連は認められなかったことをThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2021年11月26日号で報告した。

 2020年12月にバルセロナでの屋内ライブで実施された無作為化比較試験では、当日の迅速抗原検査とN95マスク着用が感染を予防するという予備的エビデンスが報告されたが、この試験は参加者数が少なく、またいくつかのロジスティックな問題が起こった。本試験は前向き非盲検無作為化比較試験で、2021年5月29日にパリのAccor Arenaで開催された屋内ライブコンサートにおいて検証した。専用ウェブサイトで募集した試験参加者は、18〜45歳、併存疾患なし、COVID-19症状なし、最近のCOVID-19患者との接触なし、イベント前3日以内の迅速抗原検査で陰性であった。試験参加者を、イベント参加者群と非参加者群(対照群)に2:1の割合で無作為に割り付け、主要評価項目はイベント後7日目に参加者が自己採取した唾液のRT-PCR検査におけるSARS-CoV-2陽性者数(非劣性マージン:0.35%未満)とした(per-protocol population)。

 当日は、全員に会場入り口で医療用マスクとペットボトルの水を配布し、手指消毒を実施した。マスクの取り外しは飲用時のみ許可、バーは閉鎖、アルコール飲料は禁止とした。会場の総面積は5万5,000平方メートル、最大収容人数は2万人で、イベント中に入れるのはフロア(1,900平方メートル)のみとし、歌やダンスは許可された。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年5月11日~25日に、専用ウェブサイトで1万8,845人が登録され、事前登録の現地参加者から1万953人が無作為に選ばれた。約束どおり検査を受けた6,968人から、無作為に6,678人が割り付けられた(イベント参加者群4,451人、非参加者群2,227人、年齢中央値28歳、女性59%)。参加者群の88%(3,917人)および非参加者群の87%(1,947人)がフォローアップ要件を順守した。
・イベント後7日目のRT-PCRで、参加者群3,917人中8人(発生率:0.20%、95%CI:0.09~0.40)、非参加者群1,947人中3人(発生率:0.15%、95%CI:0.03~0.45)が陽性で、陽性率の絶対差の95%CIは-0.26~0.28%だった。

(ケアネット 金沢 浩子)