造血器腫瘍における遺伝子パネル検査、現状と今後の課題は?/日本血液学会

2019年6月に固形がんに対する遺伝子パネル検査が保険適用となり実臨床で使われるようになっているが、リキッドバイオプシーを使ったパネル検査が登場し、造血器腫瘍においても数年内にパネル検査が保険適応となる見込みだ。2021年9月23~25日にオンライン開催された第83回日本血液学会学術集会では「血液内科におけるゲノム医療の現状と課題」と題するシンポジウムが行われ、現状の課題と今後について情報が共有された。
冒頭、国立がん研究センター研究所の片岡 圭亮氏が「造血器腫瘍におけるパネル検査の活用:診断・予後予測」と題する発表を行った。この中で片岡氏は「固形がんのパネル検査は遺伝子異常を発見して適合する薬を見つける、いわゆるコンパニオン診断が主な目的なのに対し、造血器腫瘍では治療のほか、診断と予後予測にも使われる。現在、固形がんのパネル検査は標準治療後の患者が対象だが、造血器腫瘍では初発段階から使えることが望ましい」と説明した。さらに「造血器腫瘍で多く発生する遺伝子異常は固形がんとは異なるため、新たな専用パネルが必要となる」と述べた。
すでにがんセンターでは、2020年から大塚製薬や他医療機関と合同で国産の造血器腫瘍専用パネルの開発と臨床現場への応用を行う試験的プロジェクトを開始しており、この試験の中間解析からも、造血器腫瘍における遺伝子パネル検査の結果は、治療よりも診断・予後予測に役立つ確率が高く、とくに骨髄系腫瘍においてその傾向が顕著であることが裏付けられたという。
後半は、岡山大学の遠西 大輔氏を座長として、現場でパネル検査を運用する医師も加わり、臨床現場での応用と今後の課題をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。現時点での造血器腫瘍におけるパネル検査は保険適用外であり、がん関連3学会が合同で作成する「次世代シークエンサー等を用いた 遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス」でも造血器腫瘍は対象外となっている。日本血液学会が独自に「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」を発表・改訂しているが、患者側への説明事項やエキスパートパネルの開催方法などの実務面については今後議論される段階だ。
このような状況下で試験的にパネル検査を行う各医師からは、「エキスパートパネルがないので、検査結果が実際に診療に役立てられているかがわからない」「生殖細胞系列変異が検出された場合、どこまで患者さんに伝えるべきか」といった声が上がった。これに対し、パネル検査が先行している固形がん、とくに遺伝子外来・カウンセリングを重点的に行っている小児がん分野の取り組みから学ぶことが多いのではないか、という意見が出されていた。
(ケアネット 杉崎 真名)
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