小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬~ネットワークメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/13

 

 小児および青年期のうつ病は、教育や仕事の成果、対人関係、身体的健康、メンタルヘルス、ウェルビーイングなどに重大な影響を及ぼす。また、うつ病は自殺念慮、自殺企図、自殺との関連がある。中等度~重度のうつ病には抗うつ薬が使用されるが、現在さまざまな新規抗うつ薬が使用されている。ニュージーランド・オークランド大学のSarah E. Hetrick氏らは、抑うつ症状、機能、自殺に関連するアウトカム、有害事象の観点から、小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬の有効性および安全性を比較するため、ネットワークメタ解析を実施し、年齢、治療期間、ベースライン時の重症度、製薬業界からの資金提供が臨床医によるうつ病評価(CDRS-R)および自殺関連アウトカムに及ぼす影響を調査した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2021年5月24日号の報告。

 2020年3月までに公表された文献をCochrane Common Mental Disorders Specialised Register、Cochrane Library、Ovid Embase、MEDLINE、PsycINFOより検索した。うつ病と診断された6~18歳の男女を対象に、新規抗うつ薬の有効性を他剤またはプラセボと比較したランダム化比較試験を含めた。新規抗うつ薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン阻害薬、四環系抗うつ薬を含めた。独立した2人のレビュアーが、タイトル、アブストラクト、フルテキストよりスクリーニングし、データ抽出およびバイアスリスク評価を行った。評価アウトカムは、うつ症状の重症度(臨床医による評価)、うつ症状の治療反応または寛解、うつ症状の重症度(自己評価)、機能、自殺関連アウトカム、全体的な有害事象とした。2値データはオッズ比(OR)、連続データは平均差(MD)として分析した。ランダム効果ネットワークメタ解析は、多変量メタ解析を用いて、頻度論的フレームワークで実行した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。結果の解釈や説明を標準化するため、informative statementsを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・分析には、26件の研究を含めた。
・2つの主要アウトカム(臨床医面談によるうつ病の臨床診断、自殺)のデータは十分ではなかったため、副次的アウトカムのみで結果は構成された。
・ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、CDRS-Rスケールにおけるうつ症状の「小さく、重要でない」軽減(範囲:17~113)が認められた。
 【エビデンスの確実性:高】
 ●パロキセチン(MD:-1.43、95%CI:-3.90~1.04)
 ●vilazodone(MD:-0.84、95%CI:-3.03~1.35)
 ●desvenlafaxine(MD:-0.07、95%CI:-3.51~3.36)
 【エビデンスの確実性:中】
 ●セルトラリン(MD:-3.51、95%CI:-6.99~-0.04)
 ●fluoxetine(MD:-2.84、95%CI:-4.12~-1.56)
 ●エスシタロプラム(MD:-2.62、95%CI:-5.29~0.04)
 【エビデンスの確実性:低】
 ●デュロキセチン(MD:-2.70、95%CI:-5.03~-0.37)
 ●ボルチオキセチン(MD:0.60、95%CI:-2.52~3.72)
 【エビデンスの確実性:非常に低】
 ●その他の抗うつ薬
・うつ症状の軽減効果において、ほとんどの抗うつ薬の間に「小さく、重要でない」違いが認められた(エビデンスの確実性:中~高)。他のアウトカムにおいても同様であった。
・ほとんどの研究において、自傷行為または自殺リスクは、研究の除外基準であった。
・含まれているほとんどの研究において、自殺関連アウトカムの割合は低く、すべての比較で95%信頼区間は広くなっていた。
・自殺関連アウトカムに対する効果については、プラセボと比較し、エビデンスの確実性は非常に低かった。
 ●ミルタザピン(OR:0.50、95%CI:0.03~8.04)
 ●デュロキセチン(OR:1.15、95%CI:0.72~1.82)
 ●vilazodone(OR:1.01、95%CI:0.68~1.48)
●desvenlafaxine(OR:0.94、95%CI:0.59~1.52)
●citalopram(OR:1.72、95%CI:0.76~3.87)
●ボルチオキセチン(OR:1.58、95%CI:0.29~8.60)
・エスシタロプラム(OR:0.89、95%CI:0.43~1.84)は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」低下させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:低)。
・以下の薬剤は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された。
 ●fluoxetine(OR:1.27、95%CI:0.87~1.86)
 ●パロキセチン(OR:1.81、95%CI:0.85~3.86)
 ●セルトラリン(OR:3.03、95%CI:0.60~15.22)
 ●ベンラファキシン(OR:13.84、95%CI:1.79~106.90)
・ベンラファキシンは、desvenlafaxine(OR:0.07、95%CI:0.01~0.56)およびエスシタロプラム(OR:0.06、95%CI:0.01~0.56)と比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:中)。
・抗うつ薬間のその他の比較においては、エビデンスの確実性は非常に低かった。
・全体として、ランダム化比較試験の方法論的欠如により、新規抗うつ薬の有効性および安全性に関する調査結果を解釈することは困難であった。

 著者らは「ほとんどの新規抗うつ薬は、プラセボと比較し、うつ症状を軽減する可能性が示唆された。また、抗うつ薬間でのわずかな違いも認められた。しかし、本結果は、抗うつ薬の平均的な効果を反映しているため、うつ病は不均一な状態であることを考慮すると、患者ごとに治療反応が大きく異なる可能性がある。したがって、ガイドラインやその他の推奨事項を作成する際、新規抗うつ薬の使用が、状況により一部の患者に正当化される可能性があるかを検討する必要がある」としている。

 さらに「自殺リスクを有する可能性のある小児および青年は、試験から除外されるため、その効果については明らかにならなかった。小児および青年への抗うつ薬使用を検討する際には、患者およびその家族と相談する必要がある。そして、新規抗うつ薬間の効果や自殺関連アウトカムの違いを考えると、治療効果および自殺関連アウトカムを注意深くモニタリングすることが重要であろう。さらに、ガイドラインの推奨事項に従い、心理療法、とくに認知行動療法を考慮することが求められる」としている。

(鷹野 敦夫)

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