新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/01

 

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。

ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入部位に腫脹

 これまでに、モデルナ製ワクチンの1回目および/または2回目の投与直後に、美容目的でのヒアルロン酸注入の経験がある症例で、軟部組織の腫脹や顔面浮腫が報告されている1)。これらはモデルナ製ワクチンの第III相試験中に観察された。ワクチン接種後1~2日の間に報告され、ヒアルロン酸注入の時期はワクチン接種の2週間前から2年前までの範囲であった。また、過去にはインフルエンザワクチン接種後にも、同様の反応が報告されている2)。乳房インプラントや人工関節などについても、さまざまな種類のワクチン接種後に炎症反応を起こす可能性があるという。

 ワクチン接種後にヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、注目すべき反応がみられた4例についての詳細は以下のとおり。

[症例1(76歳)]
手術歴:美容的豊胸手術(64ヵ月前)
症状:痛み、腫脹(両側)
ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製ワクチン、初回接種2日後
診断:被膜線維化
治療経過:保存的治療(NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後2日で解消

[症例2(52歳)]
手術歴:美容的豊胸手術(17ヵ月前)
症状:痛み、発赤(両側)
ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製、初回接種2日後
診断:被膜線維化
治療経過:保存的治療(抗菌薬・NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後まもなく解消

[症例3(52歳)]
手術歴:インプラントベースの再建のためのエキスパンダー挿入(9ヵ月前~、最後の挿入は4週間前)
症状:痛み(片側)
ワクチンの種類と症状発現時期:Johnson & Johnson製、接種3日後
治療経過:保存的治療(オピオイド・メタミゾール経口投与)→数日中に解消

[症例4(53歳)]
手術歴:インプラントベースの再建(2ヵ月前)
症状:痛み、炎症、血清腫(片側)
ワクチンの種類と症状発現時期:AstraZeneca製、初回接種1日後
治療経過:外科的治療(インプラント除去と自家乳房再建、抗生物質静脈投与)→術後の経過は順調、数日後に退院

 著者らは、世界中で数百万回の新型コロナワクチン接種が行われた後、インプラント施行歴のあるごく少数で観察されたものであり、大きな懸念はないだろうとしたうえで、ワクチン接種後のインプラントに関連する免疫反応を注意深く観察するよう患者に助言する必要があるのではないかと指摘。同時に、インプラントに対するワクチン接種後の反応は治療により管理可能で、COVID-19感染に伴うリスクがこれらの非常にまれにしか観察されない反応によってもたらされるリスクをはるかに上回っていると伝えるべきだと結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)