日本循環器協会が発足―予防啓発や人材育成など7つの事業を柱に

提供元:ケアネット

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公開日:2021/05/20

 

 5月10日、循環器病の新たな団体として『日本循環器協会』が発足した。代表理事に小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授)、平田 健一氏(神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野教授)を迎え、各都道府県などと連携を取ることで、患者の心不全予防の啓発に力をいれていく。

日本循環器学会・日本心臓財団と三位一体で活動

 循環器病による国内死亡率は近年の高齢化に伴いがんよりも高い。また、健康寿命にも大きく影響を及ぼしており、平均寿命に対し、健康寿命は男性で8.84年、女性で12.35年も短く、国としての大きな問題になっている。そこで、2016年から「脳卒中・循環器病克服5ヵ年計画」や「脳卒中・循環器病対策基本法」が、昨年10月には「循環器病対策推進基本計画」が動き出したことで、各都道府県でも基本計画が実行されていくことになる。これまでも循環器病領域には歴史のある日本循環器学会や日本心臓財団が存在するが、いずれも患者やサポート企業、自治体との連携が限定的であったことを踏まえ、市民により近い距離での情報発信や患者・家族サポートなどの活動を行うための新たな組織が必要となり設立に至った。

 小室氏は「 “心不全は4回予防できる”。このなかで協会の関与する範囲は広く、ステージAの前段階である予防啓発からステージDの緩和ケアにまで及ぶ。われわれは事業活動として7つの柱を推進し、患者向けの相談窓口の設置、医師以外の医療者の育成にも積極的に関わっていく。臨床研究の分野においても上市した薬剤の日本人での適正などの把握に努める」と説明した。また、このコロナ禍で心筋梗塞による外来者数は減少傾向を示すことに触れ、「受診控えをなくすための啓発も必要」とコメントした。

 同じく代表理事を務める平田氏は、「平均寿命と健康寿命の乖離を縮めるために循環器病対策が課題となる。救急診療にならびリハビリテーションも有効な治療法。これまで、循環器診療は“救命”は当然の意義であったものの、予防啓発活動や市民活動に及んでおらず、以前より問題視されてきた。患者・患者家族の言葉を拾い上げるためにはなくてはならない団体として、今日の設立は日本循環器学会としても長年の夢であった。車の両輪のように日本循環器学会や日本心臓財団と一丸となって取り組んでいきたい」とコメントした。

日本循環器協会の主な事業活動

(1)シンポジウム、セミナー、レクチャー会等の開催
(2)産学連携による一般向けおよび医療者向け広報・啓発資材の制作・配布
(3)SNSを利用した国民に向けた循環器病の予防及び治療に関する知識の普及啓発
(4)循環器病の患者・家族への療養指導
(5)患者・家族支援を目的としたチャリティ活動
(6)チーム医療実践のための多職種ネットワーク形成支援と調査研究
(7)循環器病診療に係る人材の育成
 ※特に循環器専門医以外のメディカルスタッフの育成
(8)産学連携および患者団体との連携に基づく循環器領域の調査・研究
(9)循環器に関する基礎・臨床研究の支援
(10)国外を拠点とする循環器病関連団体と連携した予防啓発活動及び交流事業

 なお、協会ホームページは今後の作成を予定している。

(ケアネット 土井 舞子)