片頭痛予防に対する抗CGRPモノクローナル抗体の付加価値

提供元:ケアネット

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公開日:2021/05/18

 

 35年間のトランスレーショナルリサーチにより、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の伝達を阻害することによる片頭痛治療への新しい道が開かれた。短時間作用型のgepant系CGRP受容体スモールアンタゴニストの後に開発された、CGRPまたはCGRP受容体をブロックするモノクローナル抗体(CGRP/rec mAbs)は、片頭痛治療のパラダイムシフトを起こした。トリプタンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のような一過性の効果を有する古典的な急性期治療薬とは異なり、CGRP/rec mAbsは、三叉神経血管系の末梢部分でのみ長期間作用するため、持続性のある治療を行うことができる。これは、主に片頭痛の病態生理における上流で作用する古典的な予防薬とは異なる。CGRP/rec mAbsであるeptinezumab、erenumab、fremanezumab、ガルカネズマブのランダム化比較試験(RCT)では、数千人の患者を対象としており、最も広く研究されている片頭痛予防薬となっている。これらの結果によると、CGRP/rec mAbsは、プラセボよりも有意に優れていることが認められており、Dodick氏により包括的なレビューが行われている。ベルギー・リエージュ大学のJ. Schoenen氏らは、これらのRCTよりプラセボ減算アウトカムおよび治療必要数(NNT)について要約し、エフェクトサイズ、効果発現、持続性、患者サブグループにおける治療反応、安全性、忍容性、費用対効果に焦点を当て、その後公表された新たな事後研究について分析を行った。また、CGRP/rec mAbsの1つを用いた限定的な実臨床経験について要約した。Revue Neurologique誌2020年12月号の報告。

 主な結果は以下のとおり。

・方法論的違いや直接比較試験が欠如しているため、比較における信頼性は低いものの、4剤のCGRP/rec mAbsは、全体として有効性および忍容性プロファイルの違いは少ないと考えられる。
・片頭痛の軽減に対するプラセボ減算50%治療反応率の平均値は、反復性片頭痛(NNT:4~5)で21.4%、慢性片頭痛(NNT:4~8)で17.4%であった。
・改善率が50%超の患者はまれであり、持続的な頭痛を伴う慢性片頭痛患者では治療反応患者が少なく、片頭痛の予兆の改善は認められなかった。
・効果発現は、投与後1週間以内に認められ、1ヵ月でほぼ最大となった。
・その効果は、長期間持続し、治療終了後数ヵ月間継続する場合もあった。
・CGRP/rec mAbsは、過去に予防的治療で奏効しなかった患者や薬物乱用患者に対しても有効であったが、そのエフェクトサイズは小さい可能性が示唆された。
・CGRP/rec mAbsは、片頭痛による問題や医療資源の利用を有意に減少させる。
・CGRP/rec mAbsの副作用プロファイルは、いくつかのまれな例外を除き、プラセボの副作用プロファイルと同様であり、虚血におけるCGRPの保護的作用に関連するにもかかわらず、現在までに治療に関連する血管系の有害事象は報告されていない。
・利用可能な片頭痛の予防的治療の観点からみると、CGRP/rec mAbsの主な利点は、優れた有効性よりも、有害事象の少なさであると考えられる。
・費用対効果に関しては、erenumabの予備的な薬理経済分析において、未治療またはonabotulinumtoxinAによる治療と比較し、慢性頭痛に対する費用効果の高さが認められている。しかし、発作の頻度が少ない反復性片頭痛では、費用効果が低い可能性がある。

(鷹野 敦夫)