日本における認知症専門チームに対する金銭的インセンティブの効果

提供元:ケアネット

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公開日:2021/04/23

 

 これまで、急性期治療環境下における認知症治療の質は批判的にみられていた。2016年に日本において、急性期病院の認知症専門家チームによる認知症ケアに対する金銭的インセンティブが導入された。筑波大学の森田 光治良氏らは、この金銭的インセンティブが、短期的な結果(院内死亡率および30日間の再入院)に対して有用であったかを調査した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年3月17日号の報告。

 日本の全国入院患者データベースを用いて、2014年4月~2018年3月に肺炎、心不全、脳梗塞、尿路感染症、頭蓋内損傷、股関節骨折で入院した中等度~高度の認知症高齢者を特定した。金銭的インセンティブを採用した病院(185件中180件)と採用しなかった病院(744件中180件)の傾向スコアが一致するよう選択した。次に、患者レベルの差分分析を実施した。感度分析では、介入後のグループにおいて、実際に認知症ケアを受けた患者に限定した。

 主な結果は以下のとおり。

・金銭的インセンティブの採用と院内死亡率(調整オッズ比:0.97、95%CI:0.88~1.06、p=0.48)または30日間の再入院(調整オッズ比:1.04、95%CI:0.95~1.14、p=0.37)との間に関連は認められなかった。
・金銭的インセンティブを採用している病院の患者のうち、実際に認知症ケアを受けていた患者は29%のみであった。
・感度分析では、認知症ケアを受けることと院内死亡率低下との関連性が示唆された。

 著者らは「個々の認知症ケアが院内死亡率の低下と関連していることが確認されたが、日本の認知症専門家チームによる認知症ケアを強化するための金銭的インセンティブは、効果的に機能していない可能性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)