自閉スペクトラム症における統合失調症や気分障害の合併率

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/03/30

 

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、他の疾患を合併しているケースが少なくない。多くの研究において、ASD患者を対象に精神医学的合併症の有病率が報告されているものの、合併症の発生率は明らかになっていない。台湾・国立台湾大学医学院附設病院のYi-Ling Chien氏らは、台湾レセプトデータベースを用いて、ASD患者における主な精神医学的合併症の発生率および性別、ASDサブタイプ、自閉症関連の神経発達状態と発生率との関連について調査を行った。Autism Research誌2021年3月号の報告。

 対象は、ASD患者3,837例(自閉症:2,929例、アスペルガー症候群:447例、特定不能な広汎性発達障害:461例)および年齢、性別をマッチさせた対照群3万8,370例。統合失調症スペクトラム障害、双極性障害、うつ病の発生率を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・3つのASDサブタイプすべてにわたる対照群と比較し、ASD患者の精神医学的合併症の発生率は、有意に高かった。
 ●統合失調症スペクトラム障害:9.7人/1,000人年
 ●双極性障害:7.0人/1,000人年
 ●うつ病:3.2人/1,000人年
・特定不能な広汎性発達障害は、自閉症よりも、うつ病リスクが高かった。
・アスペルガー症候群の女性は、男性よりも、統合失調症スペクトラム障害リスクが有意に高かった。
・自閉症関連の神経発達状態を考慮すると、合併症の発生率は大幅に低下した。

 著者らは「ASD患者では、精神医学的合併症の発生率は高く、ASDサブタイプ、性別、自閉症関連の神経発達状態の影響を受けることが示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)

[ あわせて読みたい ]