中等度COVID-19へのトシリズマブ、挿管・死亡リスク低減せず/NEJM

これまで明らかになっていなかった、人工呼吸器を要しない中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対するIL-6受容体遮断薬トシリズマブの有効性について、挿管または死亡のリスクを低減しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJohn H. Stone氏らが行った、COVID-19入院患者243例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。ただし、有効性比較の信頼区間(CI)値が幅広く、一部の有益性と有害性は排除できないとしている。NEJM誌オンライン版2020年10月21日号掲載の報告。
トシリズマブを単回投与し、挿管または死亡アウトカムを比較
研究グループは、COVID-19による過剰炎症反応期(38度超の発熱、肺浸潤、酸素飽和度92%超の維持のための酸素補充療法を必要とする、これらのうち2つ以上を認める)243例を対象に試験を行った。被験者を2対1の割合で2群に分け、標準治療に加えて、一方にはトシリズマブ(8mg/kg体重)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ単回投与した。
主要アウトカムは挿管または死亡で、time-to-event解析で評価した。有効性に関する副次アウトカムは、臨床的増悪および、ベースラインで酸素補充療法を行っていた患者における同療法の中止で、いずれもtime-to-even解析で評価した。
臨床的増悪リスクに有意差なし
被験者243例のうち、男性は141例(58%)、女性は102例(42%)、年齢中央値は59.8歳(範囲:21.7~85.4)だった。ヒスパニック系または中南米系の患者が45%を占めた。挿管または死亡に関する、トシリズマブ群のプラセボ群に対するハザード比(HR)は0.83(95%CI:0.38~1.81、p=0.64)、臨床的増悪のHRは1.11(0.59~2.10、p=0.73)で、いずれも有意差はなかった。14日時点で増悪が認められたのは、トシリズマブ群18.0%、プラセボ群14.9%だった。
酸素補充療法中止までの期間中央値は、それぞれ5.0日と4.9日で同等だった(p=0.69)。また、14日時点で酸素補充療法を受け続けていたのは、トシリズマブ群24.6%、プラセボ群21.2%だった。
なお、Grade3以上の重篤な感染症発生率については、プラセボ群17.1%に対し、トシリズマブ群は8.1%と有意に低率だった(p=0.03)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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