COVID-19検査法と結果どう考えるか/日本感染症学会

提供元:ケアネット

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公開日:2020/10/28

 

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏[東邦大学医学部 教授])は、10月12日に「COVID-19検査法および結果の考え方」を提言としてまとめ、同会のホームページで公開した。
 提言では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でさまざまな検査法、検査機器の登場により日々新しい情報が次々と発表されて行く中で、遺伝子検査で陽性を示す患者の感染性をどのように評価していくのかが検査の重要な課題として定義。その中でもCt値(Cycle Threshold)が重要な項目の1つとして将来的に遺伝子検査陽性が持続する患者に対し、Ct値や特異抗体の検出などを併用することで、正確に感染性を評価することができるようになると示唆している。

 以下に「COVID-19検査法および結果の考え方」の概要をまとめた。なお、この内容は2020年10月初めの情報であり、今後変更される可能性があることも留意いただきたい。

検査の適用は4つのタイプ

 「検査の適用に関する基本的考え方」として、新型コロナウイルス感染症対策分科会から、COVID-19に対する検査の基本的考え方が下記のように示されている。
(1)有症状者(COVID-19 を疑う症状がある患者)
(2)無症状者
 a 感染リスクおよび検査前確率が高い場合(例:クラスター発生時、医療機関や高齢者施設など)
 b 感染リスクおよび検査前確率が低い場合(例:海外渡航時、スポーツ選手、文化・芸能など)

 また、検査法ごとに使用できる検体および対象者として、検査法では「遺伝子検査」「高感度抗原検査」「簡易抗原検査」の3つが、検体では「鼻咽頭」「鼻腔」「唾液」の3つがあり、有症状者、無症状者により使い分けて使用することが厚生労働省より発表されている。

 とくにインフルエンザ流行の秋冬においては、鼻咽頭あるいは鼻腔検体を用いてインフルエンザとCOVID-19 の検査を同時に実施することも想定し、同学会の過去の提言COVID-19病原体検査の指針を参考にしてほしいと述べている。

各検査法の特徴と注意点

・遺伝子検査法
 特徴:数十コピーのウイルス遺伝子を検出できるほど感度が高い
 注意点:検査時間が比較的長い(1~5時間)、専用機器・熟練した人材が必要、高コストなど
 おおむね感度90%以上、特異度はほぼ100%
・抗原検査
 特徴:検体採取ののち約30分で目視による判定が可能である(定性試験)
 注意点:イムノクロマトグラフィー法では感度が低く、唾液検査は認められていない。ルミパルスは、遺伝子検査に近い感度が得られるとされている。高感度抗原検出検査は、無症状者の鼻咽頭拭い液および唾液を用いた検査でも承認
・抗体測定法
 特徴:COVID-19では抗体産生が、発症から受診まで2週間(通常、特異抗体産生は感染後2~3週間必要)ほどの経過である症例もあり、このような場合、患者血液の抗体の検出が診断に役立つ
 注意点:感染・発症していても抗体検査が陽性にならない症例があることに注意。感度・特異度ともに他の方法と比較して劣り、製品ごとのばらつきも大きい

感染性を評価するための指標としてCt値を提言

 症状が軽快したのちも、数週間にわたって遺伝子検査が陽性を示すことが報告されている。長期間の遺伝子検査陽性を示す患者において、いつまで隔離を行う必要があるのか(感染性はいつまで続いているのか)の判断に苦慮することが多い。

 そこで、感染性を評価するための指標として遺伝子コピー数(Ct値)を提言している。408症例の検討から発症時点でのCt値は20前後であったものが、日数が経過するごとにCt値は高くなり(ウイルス遺伝子数が減少)、発症9日の時点でCt値は30.1となっている1)。また、発症からの日数とCt値およびウイルス培養結果の関連では、Ct値が高くなるにしたがい(ウイルス遺伝子数が減少)、検体からのウイルスの分離率が低下していることがわかる。

 これらの研究からウイルスの分離(すなわち感染性)は発症からの日数およびウイルスRNA量に強く依存している可能性を示すものであると説明している。

退院基準の考え方

 遺伝子検査がなかなか陰性化しないことで、無症状であっても退院させられない症例の増加が問題となっている。そこで、遺伝子検査の陰性結果(Test-based strategy)とともに、発症および症状消失からの日数を参考に退院を判断するSymptom-based strategy の導入が検討されている。

 下記に「COVID-19陽性者の退院基準・解除基準」を示す。
 1)有症状者の場合
 (1)発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後、72時間経過した場合
 (2)症状軽快の24時間後、2回のPCR検査(24時間間隔)で陰性確認
 2)無症状者の病原体保有者の場合
 (1)検体採取日から10日間経過した場合
 (2)検体採取日から6日間経過後、2回のPCR検査(24時間間隔)で陰性確認

 以上今後の検査、退院などに際し参考としていただきたい。

■参考
COVID-19検査法および結果の考え方

(ケアネット 稲川 進)

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