新型コロナウイルス感染症、“疑い例”の定義について/日本医師会

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/02/07

 

 刻々と状況が変化する中、新型コロナウイルス感染症の「臨床的特徴」や「感染が疑われる患者の要件」について、適時アップデートが行われている。2月5日の日本医師会の定例会見では、厚生労働省発出の文書に基づく現時点での定義や、今後の医療機関での対応の見通しについて、釜萢 敏常任理事が説明した。

初めて“濃厚接触”を具体的に定義

 厚生労働省では、2月4日付の感染症法に基づく届出基準の一部改正についての都道府県宛通知1)において、同感染症の「臨床的特徴」および「感染が疑われる患者の要件」を下記のように定義している。

<臨床的特徴(2020年2月2日時点)>
 臨床的な特徴としては、潜伏期間は2~10日であり、その後、発熱、咳、全身倦怠感等の感冒様症状が出現する。一部のものは、主に5~14日間で呼吸困難等の症状を呈し、胸部 X 線写真、胸部 CT などで肺炎像が明らかとなる。高齢者及び基礎疾患を持つものにおいては重症化するリスクが一定程度あると考えられている。

<感染が疑われる患者の要件>
 患者が次のア、イ、ウ又はエに該当し、かつ、他の感染症又は他の病因によることが明らかでなく、新型コロナウイルス感染症を疑う場合、これを鑑別診断に入れる。ただし、必ずしも次の要件に限定されるものではない。

ア)発熱または呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって、新型コロナウイルス感染症であることが確定したものと濃厚接触歴があるもの
イ)37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたもの
ウ)37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたものと濃厚接触歴があるもの
エ)発熱、呼吸器症状その他感染症を疑わせるような症状のうち、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断し(法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当)、新型コロナウイルス感染症の鑑別を要したもの

※濃厚接触とは、次の範囲に該当するものである。
・ 新型コロナウイルス感染症が疑われるものと同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があったもの
・ 適切な感染防護無しに新型コロナウイルス感染症が疑われる患者を診察、看護若しくは介護していたもの
・ 新型コロナウイルス感染症が疑われるものの気道分泌液若しくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高いもの

 釜萢氏は上記イ、ウで示される「WHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域」について、中国湖北省が該当と説明。中国の湖北省以外の地域は該当しないのかとの問合せもあるが、検査対象となる疑い例イ、ウの定義としては、現時点では原則として同地域に限定されるとした。

「帰国者・接触者相談センター」で受け付け、「帰国者・接触者外来」で受診・検査

 また、厚生労働省は2月1日付の事務連絡2)で、都道府県宛に「帰国者・接触者相談センター」ならびに「帰国者・接触者外来」の設置を指示。相談センターは当面主に保健所が担い、帰国者・接触者外来は主に感染症指定医療機関が担う。ただし、今後検体が増加する可能性に備えて、標準予防策を講じられる医療機関については、感染症指定医療機関に限らず医療機関の同意のうえ指定の可能性があるとした。

 一般医療機関においては、本来帰国者・接触者外来を受診すべき疑い例であることが判明した場合は、まず相談センターへ連絡のうえ、センターで検体採取が必要と判断された場合に、帰国者・接触者外来の受診という流れとなる。

中国からの報告と、国内で診察した医師の印象は乖離か

 中国からの報告では、2割強が重症例で、死亡率は2%台とされているが、まず前提としてこれらの報告が感染者のうちの肺炎患者に限られている点を同氏は指摘。一方、まだ数例ではあると前置きしたうえで、国内で症例を診察した医師の印象は中国からの報告から得られる印象とは乖離しているようだと話した。PCR法に代わる簡易検査法や治療薬(タイからの報告はまだエビデンスといえるレベルではない)の開発等にはまだ時間を要すると考えられ、収束の見通しについても正確な見極めはこれからの段階であると強調した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)