新型コロナウイルスのゲノムの特徴/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/06

 

 2019年12月に中国・武漢市で患者が報告され、その後、病原体として同定された新型コロナウイルス(2019-nCoV)について、中国疾病予防管理センターのRoujian Lu氏らがゲノム配列を調べた。その結果、2019-nCoVはSARS-CoVとは異なり、ヒトに感染する新たなβコロナウイルスと考えられた。系統解析では、コウモリがこのウイルスの最初の宿主である可能性が示唆されたが、武漢市の海鮮卸売市場で販売されている動物はヒトでのウイルス出現を促進する中間宿主である可能性が示された。さらに構造解析から、2019-nCoVがヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体に結合できる可能性が示唆された。Lancet誌オンライン版2020年1月30日号に掲載。

 著者らは、入院患者9例(うち8例は海鮮卸売市場を訪れた症例)の気管支肺胞洗浄液サンプルと培養分離株の次世代シークエンシングを行った。これらの症例から全体および部分的な2019-nCoVゲノムシークエンスを取得し、2019-nCoVゲノムとほかのコロナウイルスの系統解析を用いてウイルスの進化について同定し、可能性のある起源を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・9例から得られた2019-nCoVの10のゲノム配列は非常に類似し、同一性は99.98%以上だった。
・2018年に中国東部の舟山で収集された2匹のコウモリ由来の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(bat-SL-CoVZC45、bat-SL-CoVZXC21)は、2019-nCoV と88%の同一性であった。しかし、SARS-CoV(約79%)およびMERS-CoV(約50%)とは同一性は低かった。
・系統解析により、2019-nCoVはβコロナウイルス属サルべコウイルス亜属に分類され、最も近縁のbat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21より比較的長い分岐長を有し、SARS-CoVとは遺伝的に異なることが認められた。
・ホモロジーモデリングから、2019-nCoVはキーである残基におけるアミノ酸変化にもかかわらず、受容体結合ドメイン構造がSARS-CoVと似ていることがわかった。

(ケアネット 金沢 浩子)