吸入ステロイド使用者、認知症リスクが35%低い

アルツハイマー病の病理学的カスケードにおいて神経炎症が重要な役割を示すことが報告され、神経炎症が治療標的として認識されてきている。今回、ドイツ・ロストック大学のMichael Nerius氏らが、ドイツにおける縦断的健康保険データを用いて認知症リスクに対するグルココルチコイドの影響を検討したところ、グルココルチコイドの使用が認知症リスクの低下に関連していることが示唆された。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2019年11月18日号に掲載
本研究では、50歳以上の17万6,485人のベースラインサンプルにおいて、ドイツ最大の健康保険会社の2004~13年の健康保険データを使用し、グルココルチコイド治療と認知症の発症率との関連を調べた。Cox比例ハザードモデルにより、性別、年齢、認知症の主要な危険因子として知られている併存疾患を調整後、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。さらに、グルココルチコイド治療について投与経路および治療期間で層別化して検討した。
主な結果は以下のとおり。
・認知症ではない17万6,485人のうち、2013年の終わりまでに1万9,938人が認知症と診断された。
・認知症発症リスクは、グルココルチコイド非使用者に比べ、使用者で有意に低かった(HR:0.81、95%CI:0.78~0.84)。
・投与経路別にみると、吸入グルココルチコイドの使用者で最もリスクが低く(HR:0.65、95%CI:0.57~0.75)、次いで点鼻(HR:0.76、95%CI:0.66~0.87)、その他(HR:0.84、95%CI:0.80~0.88)と経口(HR:0.83、95%CI:0.78~0.88)の使用者で低かった。
・長期使用者と短期使用者でリスク減少に差はなかった。
著者らは「グルココルチコイドが神経炎症にプラスの影響を与え、人々から認知症から守ることができるかどうかを判断するには、前向き臨床試験が必要」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)
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