妊娠中の抗うつ薬継続使用と妊娠糖尿病リスク

これまでの研究において、妊娠中の抗うつ薬使用に関連する妊娠糖尿病について中程度のリスクが観察されている。しかし、これは適応症による交絡の可能性も考えられる。米国・ワシントン大学のPaige D. Wartko氏らは、交絡を考慮したうえで、妊娠中の抗うつ薬継続使用と妊娠糖尿病との関連性および血糖値の評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2019年7月12日号の報告。
電子健康データとリンクしたワシントン州の出生記録を用いて、Kaiser Permanente Washington(総合医療提供システム)に登録されている女性のうち妊娠前6ヵ月間で抗うつ薬を処方されていた女性を対象に、2001~14年の間に単胎児出生のレトロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠中も抗うつ薬を使用していた女性を継続群(1,634例)、使用していなかった女性を中止群(1,211例)とした。妊娠糖尿病の相対リスク(RR)およびスクリーニング時の血糖値の平均差を算出するため、治療重み付け逆確率を用いた一般推定式を使用した。ベースライン特性にはメンタルヘルス状態および重症度の指標が含まれる。
主な結果は以下のとおり。
・中止群と比較し、継続群の妊娠糖尿病リスク(RR:1.10、95%CI:0.84~1.44)および血糖値(平均差:2.3mg/dL、95%CI:-1.5~6.1mg/dL)は、同程度であった。
・特定の抗うつ薬についてもほぼ同様の結果が観察された。セルトラリン(RR:1.30、95%CI:0.90~1.88)およびベンラファキシン(RR:1.52、95%CI:0.87~2.68)に関連する妊娠糖尿病リスクの潜在的な影響が認められたが、いずれも統計学的に有意ではなかった。
著者らは「妊娠中に抗うつ薬を使用している女性では、妊娠糖尿病や高血糖リスクが高いわけではないことが示唆された。セルトラリンとベンラファキシンについては、さらなる研究が必要かもしれない」としている。
(鷹野 敦夫)
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